トランプ大統領が鉄鋼や自動車といった伝統的な製造業の復活を声高に叫ぶ一方で、現在のアメリカ経済を力強く牽引しているのは、実は政権の保護政策とは距離を置くITや金融といった分野です。2016年12月末からの3年間を振り返ると、皮肉にも大統領の支援が届かない業界ほど、目覚ましい成長を遂げているという現実が浮き彫りになっています。
グーグルやアップルといった巨大ハイテク企業の躍進は、数字にもはっきりと現れているでしょう。2019年9月30日時点での情報サービス関連の雇用者数は約68万人に達し、2016年末と比較して9万5000人も増加しました。この16%という驚異的な伸び率は、他の主要な業種と比べても圧倒的であり、まさに時代の主役であることを証明しています。
保護政策を置き去りにする圧倒的な収益力
収益の面でも、トランプ氏が支援する鉄鋼や自動車などの4業種とハイテク分野の差は歴然です。2019年1月1日から2019年9月30日までの純利益を比較すると、ハイテク分野は前年同期比で13%増を記録しました。その利益総額は、大統領が熱心に守ろうとしている伝統産業4業種の合計に対して、なんと7倍という巨大なスケールに達しています。
また、ウォール街を象徴する金融業界も、かつてない黄金期を迎えていると言えるでしょう。JPモルガン・チェースなどの大手銀行は、2019年に過去最高益を更新する見通しです。個人ローンや市場取引が好調な背景もあり、米銀大手8行の利益合計は、金融危機前のピークであった2006年を4割近くも上回る勢いを見せています。
SNSでは、こうした状況に対して「古い産業を守るよりも、未来の産業に投資すべきではないか」といった冷ややかな声も散見されます。実際に、2016年末以降の州別の雇用成長率を見てみると、ハイテク拠点のカリフォルニア州が5.6%増と活況を呈する一方、製造業中心の中西部諸州は1%台の伸びにとどまっており、地域間の経済格差が深刻化しています。
貿易戦争の荒波と政治の影
株式市場においても、この「分断」は顕著です。2016年末から直近までの株価上昇率を比較すると、ハイテク産業は95%高という驚異的な数字を叩き出し、ダウ工業株30種平均の伸びを大きく引き離しました。大規模減税の恩恵を受けた2017年こそ全般的に好調でしたが、2018年から2019年にかけては米中貿易戦争の影響が影を落としています。
米中間の対立により、製造業やエネルギー産業の成長は鈍化し、石炭産業に至っては株価が政権発足前より6割以上も下落するという苦境に立たされています。私は、トランプ氏がどれほど伝統産業を優遇しても、デジタル化という時代の潮流に抗うことは難しいのではないかと考えています。政策と実体経済の乖離は、今後さらに広がっていくはずです。
しかし、独走を続けるIT・金融業界も、決して安泰とは言い切れません。野党・民主党の左派からは、巨大IT企業の解体や、銀行と証券の分離といった厳しい規制強化を求める声が強まっています。現在は好景気を謳歌するこれらの勝ち組企業も、次なる大統領選を控えた政治の荒波に飲み込まれるリスクを常に抱えているのです。
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