2020年01月から、地球温暖化対策の新たな国際的枠組みである「パリ協定」がいよいよ本格的に動き出します。しかし、その直前となる2019年12月にスペインで開催された第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、各国の足並みの乱れが浮き彫りとなりました。世界が結束して危機に立ち向かうべき重要な局面において、先進国と途上国の間に横たわる深い溝は、皮肉にもこれまで以上に鮮明になってしまったのです。
今回の会議で最大の焦点となったのは、国を越えて温室効果ガスの削減分を売買する「排出量取引」のルール作りでした。これは、ある国が他国の削減を支援した際、その成果を自国の目標達成にカウントできる仕組みのことです。しかし、この制度が先進国に有利に働くと主張するブラジルやインドなどの途上国側が激しく反発しました。利害の対立は最後まで解消されず、ルールの決定は2020年のCOP26へと異例の先送りとなっています。
先進国間でも生じた亀裂と消極的な日本の姿勢
対立は、単に先進国と途上国の間だけではありません。地球温暖化を食い止めるための「削減目標の引き上げ」を巡り、足並みを揃えるべき先進国の間でも激しい舌戦が繰り広げられました。一貫して高い目標を要求する欧州連合(EU)に対し、化石燃料産業を保護したい米国やオーストラリアなどは慎重な姿勢を崩しませんでした。日本もまた、明確な立場を示すことができず、国際社会の中での存在感の薄さが指摘される結果となったのです。
こうした各国の妥協のない姿勢に対し、SNS上では「政治家は未来を売っている」「地球が燃えているのに、まだお金の話をしているのか」といった厳しい批判の声が相次いでいます。海面の上昇で国そのものが消滅の危機に瀕しているツバルなどの島嶼(とうしょ)国からは、「我々の希望を後退させないでほしい」という悲痛な叫びが上がりました。各国の利害関係が交錯する中で、真に守られるべき命が置き去りにされている現状には、強い憤りを感じざるを得ません。
気候変動の脅威は、もはや予測ではなく現実のものとして私たちの生活を脅かしています。2019年07月には米国アラスカ州で史上最高の30度超えを記録し、氷河の融解によるインフラ被害も深刻化しました。日本でも毎年のように発生する記録的な集中豪雨が、日常の安全を根底から揺るがしています。こうした状況下で、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが主導する若者たちの運動が世界中に波及しているのは、当然の帰結と言えるでしょう。
加速する企業の脱炭素シフトと経済のゆくえ
政治が停滞する一方で、経済の世界では劇的な変化が起き始めています。事業活動の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際組織「RE100」への加盟企業は200社を突破しました。また、環境に悪影響を与える産業から資金を引き揚げる「ダイベストメント」の動きも加速しており、その規模は世界で1000兆円に迫ると言われています。もはや「脱炭素」への対応は、企業の生存戦略そのものとなっているのです。
パリ協定の船出は、決して平坦なものではありません。米国が離脱手続きを進める中、誰がこの巨大なプロジェクトを牽引していくのかという重い課題が突きつけられています。しかし、マネーの流れが変わり、次世代の声がこれほどまでに高まっている今、政府もいつまでも背を向け続けることはできないはずです。日本には、技術力とリーダーシップを発揮し、停滞する国際社会の歯車を再び動かす役割を果たすことが強く求められています。
コメント