2019年12月18日、日本郵政グループを揺るがす衝撃的な調査報告書が公表されました。外部弁護士らで構成される特別調査委員会が明らかにしたのは、かんぽ生命保険の不適切な販売が単なる個人の逸脱ではなく、組織全体で黙認されていたという驚くべき実態です。SNS上では「郵便局なら安心だと思っていたのに裏切られた」「高齢の親が心配」といった、信頼を寄せていた利用者からの悲鳴や怒りの声が次々と上がっています。
今回の報告書では、企業が自らを律するための仕組みである「コーポレートガバナンス(企業統治)」が機能不全に陥っていたことが鋭く指摘されました。現場では達成困難な高い営業目標が課せられ、それを達成するために不正を正当化し、問題を小さく見せようとする「矮小化(わいしょうか)」の風土が定着していたのです。本来、顧客を守るべき組織が、数字という魔物に飲み込まれてしまった姿が浮き彫りとなりました。
エリート販売員が主導した不正の構図
不正を加速させた大きな要因として、成約数に応じて支払われる多額の手当が挙げられます。驚くべきことに、全販売員のわずか1.4%にあたる「成績優秀者」が、不正の疑いがある契約の約4分の1に関与していました。会社側がこうした成績至上主義を掲げ、プロセスを無視して結果のみを厚遇したことが、モラルハザードを招いたと言えるでしょう。アンケートでは販売員の半数が「職場で不正を見聞きした」と回答しています。
狙われたのは、判断力の低下につけ込みやすい高齢層でした。法令や社内規定違反が疑われる契約者のうち、60代から90代が全体の7割を占め、さらにその8割以上が女性という結果が出ています。「持病があっても加入できる」「今より安くなる」といった虚偽の説明や、保険料の二重徴収を伴う乗り換えなど、手口は極めて悪質です。コンプライアンス(法令順守)という言葉は、現場では完全に形骸化していたと断じざるを得ません。
全容解明への遠い道のりと経営陣の責任
2014年度から2018年度の間に不利益を被った可能性がある18万3000件の顧客に対し、現在も調査が続けられています。2019年12月時点で約1万2000件以上の違反疑いが浮上していますが、事実認定が完了したのはその2割にも満たない2487件に留まります。身内への甘さが残る調査体制では、本当の意味での膿を出し切ることは難しいのではないでしょうか。調査期間は2020年3月末まで延長される見通しです。
日本郵政の長門正貢社長は記者会見で「郵便局ネットワークへの信頼を裏切った」と謝罪し、経営陣の責任について言及しました。2019年12月27日には金融庁からの行政処分も予定されており、トップの退陣を含む厳しい決断が迫られています。一度失われた「郵便局」というブランドの信頼を取り戻すには、単なる制度改正ではなく、組織の血を入れ替えるほどの抜本的な改革が必要であると私は確信しています。
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