2019年12月23日、上皇さまは86歳の誕生日をお迎えになりました。同年5月に皇位を継承されてから約8カ月が経過し、現在は上皇后さまと共に静かな日々を過ごされています。かつては、現天皇と上皇が並び立つことで生じる「二重権威」を危惧する声もありました。しかし、実際には新しい時代への移行が極めて円滑に進んでいるといえるでしょう。
「二重権威」とは、本来一人であるべき最高権威が二つ存在し、意思決定や国民の敬意が分散してしまう状態を指す専門用語です。歴史的には混乱を招く要因とされてきましたが、現代の皇室においては、お二人の賢明な振る舞いによってその心配は杞憂に終わっています。SNS上でも「代替わりがこれほど自然に受け入れられるとは思わなかった」という好意的な意見が目立ちます。
即位に伴う一連の儀式が続く中で、メディアの注目は自然と天皇、皇后両陛下へと移っていきました。そのため、平成の時代が予想以上に速やかに背景へと退いているような印象すら受けるかもしれません。国民の関心が新しい両陛下の活動に集中していることは、象徴天皇制が安定して次世代に引き継がれた何よりの証拠ではないでしょうか。
一方で、一部の週刊誌などでは、いまだに干渉を疑うような報道が散見されます。例えば、祝賀パレードの延期が上皇后さまのご意向によるものだといった主張がなされました。しかし、宮内庁はこうした憶測を明確に否定しています。根拠のない批判が上皇后さまの心身に過度な負担をかけているという事実は、私たちメディア側も重く受け止めるべき課題でしょう。
周囲の意識が形作る「権威」の在り方
2019年10月の「即位礼正殿の儀」の翌日、各国の王族を招いた茶会に上皇ご夫妻が出席されたことを問題視する声もありました。しかし、これを「公務への介入」と捉えるのは、少々無理があるように感じます。長年親交を深めてきた旧友を歓迎するのは、国際親善の観点からも自然な行為であり、むしろ皇室の絆の深さを象徴する場面だったといえるはずです。
ただ、編集者の視点から一点気になるのは、制度上の細かな運用です。今回の誕生日祝賀行事では、内閣総理大臣をはじめとする「三権の長」による拝謁が予定されています。三権の長とは、立法、行政、司法のトップを指す言葉です。現天皇への祝賀は慣例ですが、上皇さまにも同等の礼を尽くすことが、結果として「同格の存在」を演出してしまわないでしょうか。
二重権威という現象は、ご本人たちの意思以上に、周囲の忖度や過剰な演出によって作り出されてしまう側面があります。制度を支える側が、いかにして「引退された立場」と「現役の象徴」の境界線を明確に保てるかが重要です。私たちは、お二人の平穏な隠居生活を静かに見守り、新しい時代の歩みを純粋に祝福する姿勢を持つべきだと考えます。
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