2020年という年は、次世代通信規格「5G」の商用化や国際的なスポーツ祭典の開催を控え、日本の産業界全体がドラスティックに変革する記念すべき1年になりそうです。あらゆる分野でデジタル化の波が押し寄せる中、映像コンテンツの最前線を走るHJホールディングスの於保浩之社長に、これからの事業戦略を伺いました。日本テレビグループの強みを活かし、米大手のHulu(フールー)を国内で牽引するトップの言葉からは、並々ならぬ自信が伝わってきます。
2019年の動画配信市場を振り返ると、日本テレビ系ドラマである「3年A組」や「あなたの番です」のスピンオフ作品が大きな話題を呼び、会員数を大きく伸ばす原動力となりました。SNS上でも「本編の裏側が見られて最高」「フールーに入ってよかった」といった歓喜の声が溢れており、コンテンツの充実度がファンの心を掴んでいる証拠と言えるでしょう。世界的な競合プレイヤーが増えたことで、業界全体の認知度も劇的に向上しています。
激化するシェア争いを歓迎する「百貨店戦略」の全貌
2020年の春にはテレビ朝日とKDDIがタッグを組んだ新たな配信サービスが始動するなど、陣取り合戦はさらに激しさを増す見込みです。しかし、於保社長は「ライバルが増えて注目が集まれば、市場はもっと広がる」と、ポジティブな姿勢を崩しません。この群雄割拠の時代を生き抜くためにHuluが掲げるのが、あらゆるジャンルを網羅する「百貨店戦略」です。国内外のドラマや映画はもちろん、巨人戦などのスポーツ生中継まで網羅する一気通貫の姿勢で差別化を図ります。
気になる収益面ですが、2019年度は念願の黒字化を達成できる見込みとのことです。経営トップが「黒字化でやっとスタートラインに立てた」と語るように、ここからは攻めのフェーズへと移行します。今後は目先の利益を追うのではなく、集まった資金をコンテンツの制作やプロモーションへ積極的に再投資していく方針です。2020年1月にはモデルの水原希子さん主演ドラマ、さらに山下智久さんが出演する日欧共同制作作品など、強力なオリジナル作が控えています。
20代から30代の若い世代を中心に支持を広げているHuluは、日本上陸から10年目を迎える2021年9月までに、会員数を300万人まで拡大することを目指しています。この高い目標を達成するための秘策が、異業種との大胆なアライアンスです。すでに2019年春から日本ケーブルテレビ連盟と手を組み、地域に根ざしたセットプランを展開しているほか、同年11月からは丸紅新電力とのコラボプランも開始され、生活インフラを通じた顧客の囲い込みが着実に進んでいます。
可処分時間の奪い合いを制する「UI」の重要性
現代の動画配信ビジネスは、単に同業者同士の戦いにとどまりません。TwitterなどのSNS、オンラインゲーム、マンガアプリといった、ユーザーが自由に使える「可処分時間」を奪い合う全方位の戦いとなっています。生き残りの鍵を握るのは、いかに日常生活に溶け込めるかです。そのためには、心を揺さぶる魅力的な映像作品を揃えるだけでなく、アプリの操作性や画面の視認性を示す「UI(ユーザーインターフェース)」を常に磨き続ける必要があります。
今後の業界動向として、外資系・放送系・非放送系の3つ巴の戦いから、やがて淘汰の波が訪れると予測されます。膨大な予算を投じる米ネットフリックスなどの海外勢に対抗するため、国内勢は「Paravi(パラビ)」のように局の垣根を越えて連携を深めています。2020年春にはNHKのインターネット同時配信も始まり、放送と通信の融合はさらに加速するでしょう。利便性とエンタメ性を極めた事業者だけが、新しい時代の勝者になるに違いありません。
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