私たちの生活に身近な医療の世界で、2020年4月から大きな変化が訪れようとしています。厚生労働省は、医療費を圧迫する一因としてかねてより問題視されていた「薬の飲み残し」を解消すべく、本格的な対策へと乗り出しました。今回の施策では、医師や薬剤師がチームを組んで患者の減薬に取り組む病院に対して、国が支払う医療サービスの対価である「診療報酬」を上乗せする方針を固めています。国のバックアップにより、医療現場での積極的なアプローチが期待されています。
この改革の背景には、必要以上の医薬品が処方されることで、ふらつきや記憶障害といった健康被害のリスクが高まる「ポリファーマシー(多剤発現)」という深刻な問題が存在します。とりわけ高齢者層における状況は顕著であり、75歳以上の患者の4人に1人が、なんと7種類以上の薬を同時に処方されているのが現状です。SNS上でも「祖父母の薬の量が多すぎて管理しきれない」「飲むだけでお腹がいっぱいになりそう」といった、家族の健康を心配するリアルな声が多数寄せられています。
そこで厚労省は、患者の体調変化を観察しやすく処方のコントロールもしやすい「入院時」を狙って、薬の見直しを促す体制を整えました。院内の医師や薬剤師らが連携して不要な薬がないかを厳しくチェックする仕組みを評価し、病院側に経済的なメリットを付与します。これまでは「実際に2種類以上の薬を減らした実績」に対してのみ報酬が上乗せされていましたが、2020年度からは「減薬に向けた組織的な取り組み自体」も新たに評価されるため、医療機関側も挑戦しやすくなるでしょう。
さらに、高齢者の行動パターンに合わせた重複処方の防止策も導入されます。60歳以上の約4割が3つ以上の異なる医療機関を受診しているというデータがあり、それぞれの病院で同じような鎮痛剤などが処方されてしまうケースが後を絶ちません。こうした事態を防ぐため、複数の病院や街の薬局が患者の情報を共有し合うネットワーク作りも評価の対象となります。横のつながりが強化されることで、患者が意識せずとも自然に安全な処方へと導かれる環境が整備されていきます。
管理が難しくなった大量の薬が自宅に放置される「残薬」は、日本薬剤師会の推計によると、75歳以上の在宅患者だけで年間500億円規模にものぼるといわれています。これらはすべて、国民が納めた保険料や税金から賄われたものであり、看過できない巨額の社会的損失です。私は今回の改定を強く支持します。医療費の削減という財政的なメリットだけでなく、何よりも薬の相互作用による副作用からシニア世代の命を守るために、この減薬シフトは不可欠な一歩だといえるでしょう。
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