日本の国家予算において、最も大きな割合を占める社会保障費が、今まさに歴史的な正念場を迎えています。2019年11月28日現在、厚生労働省が発表した2020年度の概算要求額は32兆6234億円という驚くべき数字に達しました。これは前年度比で2.1%の増加となり、過去最大の規模を更新しています。高齢化の波は止まることを知らず、医療や介護のニーズが急増する「75歳以上」の人口が増え続けていることが、この膨張の背景にあるのです。
SNS上では「給料は上がらないのに保険料ばかり高くなる」「将来、自分たちが受給できるのか不安だ」といった切実な声が溢れています。社会保障費は1990年度からの30年間で約3倍にまで跳ね上がりました。足りない分は「赤字国債」、つまり国の借金で補っているのが実情です。本来は税金や保険料で賄うべき給付と負担のバランスが崩れ、私たちは未来の子供たちへ大きな「ツケ」を回し続けている状況にあります。
焦点となる「自然増」5300億円の壁と診療報酬改定
2020年度予算編成における最大の焦点は、高齢化に伴って勝手に増えてしまう「自然増」の抑制です。政府の見通しでは約5300億円の増加が見込まれていますが、これをいかに抑え込むかが財政再建のカギとなります。現在は介護保険のルール見直しや、薬の公定価格である「薬価」の引き下げによって、1000億円規模を削減する道筋が見えてきました。ここからさらなる上積みを狙い、財務省と厚生労働省による緊迫した交渉が続いています。
もう一つの争点は、医療機関への対価である「診療報酬」の改定です。これは医師の技術料や薬代を決定するもので、全体の改定率がわずか1%動くだけで、医療費は約4300億円も変動します。患者側の負担額や病院経営の安定、さらには医療従事者の過酷な働き方の是正など、考慮すべき要素は多岐にわたります。国民生活に直結するこの重要な判断は、12月中に下される予定であり、その動向から目が離せません。
持続可能な未来のために今こそ抜本的改革を
ここで「自然増」という言葉について補足しましょう。これは制度を変えなくても、人口構成の変化だけで医療費などが勝手に膨らむ現象を指します。2022年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始めるため、この自然増は年間8000億円規模にまで拡大すると予想されています。つまり、今の抑制策はあくまで序章に過ぎず、今後さらに厳しい舵取りが求められるのは間違いありません。
編集部としては、現在の「その場しのぎ」の予算編成には限界を感じざるを得ません。OECDのデータが示す通り、かつての日本はバランスの取れた優等生でしたが、今は制度の存続自体が危ぶまれています。痛みを伴う改革かもしれませんが、特定の世代に負担を押し付けるのではなく、全世代が納得できる「給付と負担」の再設計を急ぐべきです。2020年度予算は、私たちが未来に対して責任を果たせるかどうかの試金石となるでしょう。
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