米中貿易摩擦の懸念が市場を覆う中で、東京株式相場は上値が重い展開が続いており、中には好業績を上げているにもかかわらず、なぜか株価が低迷している企業が目立ってきています。今回は、2020年3月期に増収増益を見込んでいるにもかかわらず、予想PER(株価収益率)が特に低い銘柄をランキング形式で見てみましょう。このPERとは、株価が1株当たりの利益の何倍まで買われているかを示す指標であり、一般にこの数値が低いほど「株価が割安である」と判断されるものです。
東京証券取引所第一部上場企業のうち、時価総額が1,000億円以上で、2020年3月期の会社予想が増収・営業増益の企業を調べたところ、ランキングの上位には、エネルギーや化学といった市況業種がずらりと並びました。最もPERが低かったのはコスモエネルギーホールディングスで、わずか3倍という驚異的な水準です。これは、原油市況の回復が鈍く、今後の業績の先行きに対して市場が警戒感を持っていることの裏返しと言えるでしょう。
さらに、石油元売りの企業では、JXTGホールディングスが3位、出光興産が4位と、全体的にPERが低い水準にあります。また、化学セクターも上位に顔を出し、5位のトクヤマは主力のカセイソーダの採算改善などで営業利益が1割増える見通しですが、こちらも市場の状況次第で業績が大きく変動しやすいと見られています。その他、日鉄物産や兼松といった商社もPERが低い水準にあります。
松井証券の窪田朋一郎氏をはじめとする市場関係者からは、「世界景気が減速しかねない局面では、市況銘柄を積極的には手がけにくい」という声が聞かれます。市況銘柄とは、景気の変動や原材料価格などの国際的な市場価格(市況)に業績が大きく左右される企業のことであり、米中貿易摩擦という世界経済の先行きを不透明にする要素がある現在、投資家はこれらの銘柄をリスクが高いと見なし、投資を避けているのです。
私自身の意見としましては、この低PERランキングは、「増益予想=株価上昇」という常識が通用しない、現在の日本株市場の構造的な弱点を明確に示していると感じます。市況株が抱える業績の変動リスクに加え、米中貿易摩擦による世界景気の減速懸念が重なり、投資家は「今日の好業績」よりも「明日の不確実性」をより重視していると言えるでしょう。
この状況は、株式市場の資金が、中国依存度が低い内需株や、業績の安定性が高いディフェンシブ銘柄へとシフトしていることを物語っています。好業績なのに低PERというこの歪みは、リスクが払拭されれば一気に解消される可能性がありますが、それまでは投資家にとって、割安感と不確実性のどちらを取るかという、難しい選択を迫られることになるでしょう。
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