日本の未来を担うIT人材の不足が叫ばれる中、都立の工業高校が劇的な変化を遂げようとしています。東京都教育委員会は、超スマート社会を指す「Society 5.0」や高速大容量の「5G時代」に対応できる優秀な技術者を育成するため、従来の教育体制の抜本的な見直しに着手しました。SNS上でも「これからの時代に絶対必要な改革」「ものづくりとITの融合に期待したい」といった、前向きな応援の声が多数寄せられており、世間の注目度の高さがうかがえます。
その先頭を走るのが、東京都立町田工業高校です。同校では世界的なIT企業である日本IBMとタッグを組み、最先端のIT教育をスタートさせました。有識者会議では、Appleの創業者を引き合いに出し「スティーブ・ジョブズのような革新的な人材を輩出するべきだ」という大胆な提言も飛び出しています。学校の名称を「デジタルアカデミー」へと刷新し、変化の激しい先端技術を最前線で活躍するプロから直接学べる環境を整えるべきだ、という熱い議論が交わされているのです。
この大胆な構想に対して、学校現場からは「社会の流行に合わせて教育方針を簡単に変えてしまっても良いのだろうか」という慎重な意見も上がりました。しかし一方で、本当に大切なのは固定化されたカリキュラムそのものではないという本質的な指摘もあります。生徒が自ら能動的に学び、疑問を見つけ出す習慣こそが重要であり、そこで豊かな構想力を養うことができれば、次世代のジョブズが生まれる強固な土壌になるに違いありません。
現在、町田工業高校で実践されているのが、生徒3人から4人に対してIBMの社員1人が寄り添う「メンタリング」という対話の取り組みです。メンタリングとは、経験豊富な社会人が相談相手となり、対話を通じて本人の成長を支援する仕組みを指します。生徒たちはこの貴重な機会を2019年5月から重ねており、最新技術の動向だけでなく、仕事の現実や日々の勉強方法、将来の進路に至るまで、幅広いテーマについて現役のプロから直接アドバイスを受けています。
これまでの工業高校では、家庭の事情や学力的な理由で入学を選んだ生徒も少なくなく、自己肯定感が低くなりがちな傾向が見られました。しかし、社会人と真摯な対話を繰り返すことで、生徒たちの内面に劇的な変化が生まれています。担当の寺島和彦主幹教諭も、生徒の意欲が引き出されて内面的に大きく成長したと太鼓判を押します。さらに、技術をより深く学びたいと願い、就職ではなく進学へと舵を切る生徒が増えるなど、選択肢も広がっているのです。
IBMが展開する「P-TECH」は、高校から高専、大学までを連動させ、IT人材を育成する世界的な支援プログラムです。町田工業高校はその国内第1号として協定を結び、人工知能の「AI」や、暗号技術でデータを安全に記録する「ブロックチェーン」の授業、さらには職場体験まで実施しています。山之口和宏校長は、現時点でこの活動が直接的な採用には結びついていないとしつつも、将来的には企業との強固な採用パイプにつながることを期待しています。
現状をみつめると、工業高校からIT企業への就職はまだごくわずかに留まっています。生徒側の心理的なハードルに加え、企業側も工業高校生へ十分に目を向けていないというミスマッチがあるからです。ですが、ITの世界には多様な役割が存在します。革新的なアイデアも、それを実際にシステムとして構築するエンジニアがいなければ形になりません。私は、地道に技術を形にする工業高校生の力こそが、これからのデジタル社会に不可欠だと確信しています。
かつて1950年代には、東京大学への合格者を多数輩出し、日本の高度経済成長を技術力で支えた輝かしい工業高校が各地に存在していました。単なる過去の栄光にとどまることなく、現代の最先端ITを吸収した工業高校が「復権」を果たすことは、日本の産業界を再び活性化させる起爆剤になるでしょう。ここから未来のテックリーダーが誕生する日を、私たちは大いに期待して見守っていくべきではないでしょうか。
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