中国の湖北省武漢市を中心に猛威を振るう新型肺炎ですが、日本国内でも武漢への渡航歴がない方の感染が新たに確認されました。これにより、ついに国内でも「ヒトからヒト」への感染という次のフェーズに突入したと言えます。ネット上では「どこで感染するか分からなくて怖い」「手洗いうがいを徹底しなくては」といった不安や警戒の声が急速に広がっています。まずは現状を正しく把握し、冷静に対応することが何よりも大切になるでしょう。
中国国家衛生健康委員会の発表によると、2020年1月27日の時点で中国国内の感染者数は4515人に達し、死者は106人を記録しました。ここで注目すべきは、全体の約22%にあたる976人が重症化しているという事実です。長崎大学の安田二朗教授は、今回のウイルスの感染力について、2012年に流行した中東呼吸器症候群(MERS)を上回り、2003年に猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS)と同等であると指摘しています。
ウイルスの危険性を測る指標には、周囲にうつす強さを示す「感染力」と、命を落とす割合を示す「致死率」があります。英国の研究チームの分析では、一人の患者から平均2.6人に感染が広がっていることが判明しました。これはSARSの数値に近い水準です。一方で、現在の致死率は2〜3%程度に留まっており、MERSの約34%やSARSの約10%と比較すると低い傾向にあります。この違いを知るだけでも、過度な恐れを和らげる一助になるはずです。
ここで専門用語である「コロナウイルス」について解説します。これは顕微鏡で見ると太陽の光冠(コロナ)のような突起を持つウイルスの総称で、風邪の原因から重症肺炎まで引き起こすものです。今回の新型もこの仲間ですが、インフルエンザに比べると突然変異を起こしにくい性質を持っています。とはいえ、今後ヒトの体に過剰に適応するような変異が起きれば、流行がさらに加速する恐れも否定できません。私たちは引き続き動向を注視する必要があります。
世界が挑む治療薬とワクチン開発の最前線
緊迫した状況が続くなか、世界各国では対抗手段となる治療薬やワクチンの開発が急ピッチで進められています。中国ではすでに、エイズ治療薬として知られる「リトナビル」やウイルス性肝炎の薬を用いた臨床試験、いわゆる「治験(ちけん)」が承認されました。治験とは、開発中の薬が人間の体に安全で効果があるかを実際に試して確認する極めて重要なプロセスのことです。既存の薬が今回の新型肺炎にも有効か、検証が期待されています。
さらに、ワクチンの開発に向けては国際的な大プロジェクトが始動しました。日本やノルウェーを含む7カ国、そして米国のビル&メリンダ・ゲイツ財団などが結成した「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、世界保健機関(WHO)と連携して開発に乗り出しています。現時点では2020年の夏に治験を開始する計画が立案されており、世界中の英知を結集したスピーディーな新薬誕生への期待が、SNS上でも大きな希望として語られています。
このように医療現場や研究機関が全力を尽くしていますが、私たちがすぐに使える特効薬やワクチンが完成するまでには、どうしても一定の時間を要するのが現状です。だからこそ、メディアの視点としても、過度に最新医療へ依存するのではなく、一人ひとりの足元の予防意識が何よりの盾になると確信しています。まずは専門家が推奨するように、手洗いの徹底やマスクの着用といった基本的な衛生マナーを実直に守り抜くことが最善の防衛策です。
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