世界のサイクリストから聖地として愛される瀬戸内しまなみ海道ですが、その中央に位置する生口島の「しおまち商店街」がいま、信じられないほどの熱気に包まれています。島の内外から多様な人々が集まり、手を取り合って進める街おこしのプロジェクトが次々と本格始動しているのです。
その象徴とも言えるのが、1876年に建てられた歴史ある豪商の邸宅「堀内邸」の再利用計画でしょう。敷地面積2300平方メートルを誇るこの広大な空き家が、なんと外国人観光客らをターゲットにした三十数室の高級ホテルへと生まれ変わることが決定しました。
ホテル運営を手がけるナル・デベロップメンツは、2019年末に開催された住民説明会にて、2021年春の開業を目指すと力強く宣言しています。総額数十億円とも噂される大規模な投資に対して、当初は地元の商店街から不安の声も上がったそうです。
しかし、対話を重ねる中で住民たちの心境にも変化が訪れました。商店街の活性化に取り組むチームの代表である山口広三さんも、彼らとなら瀬戸田の未来を新しく変えられると確信したと、期待を胸に笑顔で語ってくれています。
SNS上でもこの挑戦は大きな話題を呼んでおり、「歴史的な建築がラグジュアリーホテルになるなんて最高すぎる」「しまなみ海道の新しい目的地ができて楽しみ」といった好意的な反響が続々と寄せられている状況です。
島を取り巻くアクセス環境も劇的に進化を遂げています。すでに尾道港からは自転車をそのまま載せられる便利な自転車船「ラズリ」が就航しており、2020年秋には高級クルーズ船によって広島港とも結ばれる予定となっています。
この追い風を逃すまいと、尾道市は2019年に地域の未来を話し合うワークショップを立ち上げました。島内外から集まった約200人の参加者が熱い議論を交わし、そこからユニークなアイデアが次々と芽吹き始めています。
例えばツアーガイドの渡辺祐樹さんは、2019年10月に商店街の空き店舗を活用したレンタサイクル店をオープンさせました。ここでは近隣の住民がパンや野菜を販売できる貸しスペースも併設されており、温かい交流の場となっています。
さらに、島の特産品であるレモンに着目した「レモン・ラボ」という画期的な施設も計画中です。これは島内に初めてとなる搾汁施設や、誰もが使えるシェアキッチン、そしてイベント会場としての機能を併せ持つコミュニティ拠点となります。
従来の農家はレモンを島外に運んで手数料を支払い搾汁を依頼していましたが、島内で作業が完結すれば、自分たちで付加価値を大きく高めることが可能です。発案者は資金調達を進め、2020年中の一部開設を目指しています。
地元の有名菓子店「島ごころ」も、瀬戸田をレモンの名産地としてさらにアピールすべく、魅力的な新商品の開発に汗を流しています。また、地域の交通インフラを支える本四バス開発も、新しいモビリティの導入に向けて動き出しました。
同社は2020年夏から、時速20キロ未満で公道を走る環境に優しい電動車「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」の実証実験を開始します。高齢者の移動手段や観光客の回遊性を高める次世代の乗り物として期待される存在です。
このグリスロの乗降場所を商店街に増やすことで、クルーズ船や自転車と組み合わせた新しい旅のスタイルが提案できるでしょう。新航路やホテルの開業が重なる現在のタイミングこそ、最大の好機であると確信しています。
生口島では2015年に約8500人だった人口が、2045年には約5千人にまで減少すると予測されています。しかし、この危機感を共有した人々が同じ方向を向き、外部の投資や優秀な人材を呼び込む流れを作った意義は極めて大きいです。
少子高齢化に悩む地方自治体が多い中、自分たちの強みである観光資源と特産品を掛け合わせ、外部の力を上手に巻き込む瀬戸田のスタイルは、これからの地域活性化における理想的な成功モデルケースになると私は強く確信しています。
大切なのは一過性のブームに終わらせず、持続可能な取り組みとして継続していくことです。準備が整ったプロジェクトから一つずつ形にし、島全体が輝きを増していくこれからの展開から、一瞬たりとも目が離せません。
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