2020年2月5日現在、自動車業界の春季労使交渉、いわゆる「春闘」が大きな転換期を迎えています。完成車メーカーの主要な労働組合が、相次いで賃上げ要求を公表しました。かつては自動車総連が主導し一律のベースアップ(ベア)を掲げてきましたが、2019年からその方針を一転させています。現場からは「脱一律」というキーワードのもと、各社がそれぞれの経営状況や職場環境に応じた独自の戦略を立てる動きが加速しています。
この動きに対し、SNS上でも多くの反響が寄せられています。「業界全体の景気が厳しい中で、一律の要求が難しいのは理解できる」「成果主義へのシフトは今の時代に合っているのではないか」といった冷静な分析や、「現場の負担が増える中で一時金が下がるのは複雑な気持ち」という働く側の切実な声も散見されます。業界が大変革期にある中、労使双方の緊張感ある議論が注目を集めています。
ホンダ・トヨタ・日産が描く新たな賃上げの形
具体的に各社の動向を見てみましょう。日産自動車では、業績再建という重い課題を抱えながらも、新型車投入に向けた現場の負担を考慮した要求となりました。一時金の要求を前年よりも引き下げましたが、原資全体を維持することで現場の士気低下を防ごうとする苦渋の決断が見て取れます。厳しい環境下でいかに努力を報いるか、現場での議論が紛糾した様子がうかがえます。
本田技研工業では、より踏み込んだ改革が行われています。ベアに相当する要求を月2000円とし、2014年以降初めて3000円を下回りました。特筆すべきは、その一部を社員の姿勢を評価する加算原資に充てる点です。成果のみならず、日々の努力を評価する仕組みを導入することで、社員のモチベーションを維持しようという狙いがあります。これは、数値化しにくい貢献を重視する現代的なアプローチでしょう。
一方でトヨタ自動車は、成果重視の姿勢を鮮明にしています。賃上げ要求額を前年より下げつつ、配分方式を見直しました。役割や能力評価に基づく職能個人給への配分を強めることで、社員一人ひとりの意欲向上を促しています。マツダにおいても、持続的な成長のために組合員のやる気を最大化することを重視した要求となっており、各社とも従来の慣習に捉われない独自の賃金戦略を模索しているのです。
「脱一律」がもたらす自動車総連の試練
今回の交渉は、自動車総連にとっても極めて重要な試練といえます。統一要求を廃止し、個々の組合の裁量を広げる戦略は、格差の是正や多様な働き方への対応という意味で私は非常に理にかなっていると考えます。しかし、大手企業の業績が低迷する中で、賃金底上げという社会的責務をどう果たしていくのか、その手腕が問われることになるでしょう。
特に今後は、大企業だけでなく中小・零細企業を含めた格差是正が焦点となります。総連が打ち出した最低賃金協定のマニュアル化など、底上げに向けた地道な取り組みがどのような成果を生むのか、注視する必要があります。厳しい市場環境下で、労使がどのような対話を通じて納得解を導き出せるのか。2020年の春闘は、日本の自動車産業の未来を占う重要な分岐点となるに違いありません。
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