東京都心における大規模な建設工事に不可欠な生コンクリートを製造するメーカー各社が、緊迫した局面を迎えています。東京地区の生コンメーカーで組織される東京地区生コンクリート協同組合は、2020年4月契約分からの値上げを表明しました。引き上げ額は1立方メートルあたり1000円、率にして7%という強気の改定を目指しています。段階的な値上げではなく、一気に満額獲得を狙うという異例の構えです。
ネット上やSNSでも、この動向に多くの関心が寄せられています。「五輪後の再開発ラッシュを見据えての動きか」「建設コストがさらに上がれば、巡り巡って住宅価格や家賃に影響するのでは」といった、将来のコスト負担増を懸念する声が目立ちます。また、人手不足や物流費の高騰など、業界全体が抱える構造的な課題に同情する意見もあり、議論は白熱している状況です。
メーカー側がこれほど強硬な姿勢を見せる最大の理由は、製造コストの激しい上昇にあります。主原料である「骨材」とは、生コンの体積の大部分を占める砂や砂利、砕石のことです。この骨材の価格が、主要な採取地である千葉県での資源枯渇などを背景に、5年前と比較して1トンあたり500円から1000円ほども値上がりしているのです。
さらに、物流をめぐる環境の悪化も追い打ちをかけています。深刻なドライバー不足による陸上輸送費の上昇に加え、2020年からは国際海事機関(IMO)による船舶燃料の環境規制がスタートしました。これにより、遠方から船で骨材を運ぶための海上運賃も跳ね上がっています。これに加え、結合材であるセメント自体も値上がりしており、メーカーの収益を激しく圧迫しているのが実情でしょう。
本来であれば、こうしたコスト増は速やかに価格へ転嫁されるべきです。しかし、足元の生コン需要は急激に冷え込んでいます。2019年の東京地区における出荷量は、前年比で2割以上も減少しました。職人不足などによって都市再開発の工期が後ろにズレ込んでいるためです。さらに、東京五輪の円滑な運営への配慮から、大会直前までは工事を控えるゼネコンが多いことも影響しています。
今回の価格交渉は、出荷が落ち込む「向かい風」の中で行われるため、難航は必至といえます。工事を受注したゼネコン側は、すでに確定した予算枠の中でやりくりしているため、途中の値上げを簡単に受け入れるわけにはいきません。メーカー側は「五輪が閉幕した2020年9月以降は再び繁忙期が来る」と強気ですが、足元の需要が伴わない中での交渉は非常に厳しいものになるでしょう。
私は、今回の値上げ交渉が建設業界全体の構造改革を促す試金石になると考えています。環境規制や人手不足といった社会全体の課題から生じるコスト上昇を、特定の業種だけに押し付けるべきではありません。発注者からゼネコン、そして生コンメーカーへと続くサプライチェーン全体で、適正な価格転嫁とコスト負担を分け合う柔軟な仕組みづくりが今こそ求められているのではないでしょうか。
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