美味しい食事の裏側にある生産地を笑顔にしたいという動きが、外食業界で急速に広がっています。「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズは、2020年2月14日まで対象のスイーツを注文すると1食につき10円をカカオの原産国であるガーナへ寄付する試みを実施中です。バレンタインの季節に合わせ、私たちが何気なく選ぶおやつが現地の子どもたちの教育支援につながる画期的な取り組みとして、SNSでも「美味しく食べて社会貢献できるのは嬉しい」とポジティブな声が数多く上がっています。
このような活動の根底にあるのが、途上国の原料を適正な価格で継続的に購入する「フェアトレード(公正取引)」という仕組みです。これは、生産者の生活を守り、児童労働をなくすための重要な国際協力の形と言えます。「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは、2007年からいち早くこの仕組みを導入しました。現在では18カ国もの生産地と手を結び、国内約4000店舗でフェアトレードのコーヒーや紅茶を届けています。企業の社会的責任を果たす姿勢が、今や外食を選ぶ新しい基準になりつつあるのでしょう。
ゼンショーホールディングスの支援は、単なる買い取りだけにとどまりません。蓄積された利益をもとに、2018年末にはコスタリカに頑丈な鉄筋コンクリート製の高校を建設しました。さらに2019年にはタンザニアの小規模農家へ有機栽培への転換をサポートするなど、現地が自立できる持続可能な仕組みを自社でプロデュースしています。こうした一歩踏み込んだ姿勢に対して、ネット上では「ただの寄付で終わらせないのが素晴らしい」「企業として信頼できる」といった賞賛の輪が広がっています。
日本の食文化を支える「海」への恩返しに動く企業もあります。くら寿司では、日本の漁業を未来へつなぐため、売り上げの一部を全国漁業就業者確保育成センターに寄付する取り組みをスタートさせました。2021年1月31日までに約1000万円の寄付を予定しており、漁業を志す若者と漁業団体を結ぶマッチングイベントの運営資金に充てられます。人手不足が深刻な日本の一次産業を支えるアプローチは、国内の食のインフラを守るためにも極めて有意義な選択であると私は確信しています。
買い手である私たちの意識も、確実に変化しているようです。2019年に実施された調査によると、「SDGs(持続可能な開発目標)の達成や社会課題の解決に取り組む企業の商品を買いたい」と答えた人は63.1%に達し、前年より9.3ポイントも上昇しました。もはや消費者は、安さや味だけでお店を選んではいません。企業の背後にある哲学や社会への向き合い方を厳しく、そして温かく見つめています。だからこそ外食企業は、選ばれる存在であり続けるために、こうしたメッセージを社会へ発信し続ける必要があるのです。
しかし、こうした素晴らしい取り組みも、消費者にその価値が正しく伝わらなければ長続きしません。フェアトレードの意義を分かりやすく伝える工夫として、スターバックスコーヒージャパンの試みは実に見事です。同社では毎年9月9日前後に「99キャンペーン」を開催しています。環境や労働に配慮して調達されたコーヒー豆の割合が99%を超えたことを祝うイベントで、カップに「99」と手書きして手渡したり、店舗でセミナーを行ったりして、ファンとの絆を深めています。
2015年に日本から始まったこのキャンペーンは、今や世界中のスターバックスへと広がりを見せています。ただ商品を売るだけでなく、その背景にある物語を消費者に共有し、巻き込んでいくスタイルこそが、これからのスタンダードになるはずです。「良いものを作って、正しく届ける」という外食企業たちの真摯な模索は、私たちの消費行動そのものをアップデートしてくれるに違いありません。明日のランチは、そんな社会に優しい視点を持ったお店を選んでみてはいかがでしょうか。
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