中国を発端とした新型肺炎の感染拡大により、日本経済の先行きに強い不透明感が漂っています。大和総研は、この感染症の流行が長期化した場合、2020年の日本経済がマイナス成長に陥る可能性があるという衝撃的な予測をまとめました。2019年10月1日に実施された消費税率引き上げの影響から、ようやく立ち直ろうとしていた国内景気ですが、その回復の足取りは大幅に遅れるとの見方が大勢を占めています。
ネット上やSNSでは「増税に続いて新型肺炎なんて大打撃すぎる」「旅行業界やお店が本当に心配」といった、不安を吐露する声が相次いで急増中です。さらに、世界的な不安感から安全資産とされる円が買われ、円高が進行することや、景気の冷え込みによる物価下落を懸念する声も上がっています。大和総研が公表した、流行が約1年続くというリスクシナリオに基づく試算は、私たちの生活にとっても決して他人事ではない深刻な数字を示しているのです。
インバウンド激減とサプライチェーン寸断の脅威
この試算によれば、2020年の中国からの訪日外国人客(インバウンド)が前年比で400万人も減少し、為替が対ドルで5円ほど円高に振れた場合、日本の実質経済成長率は0.9ポイントも押し下げられます。インバウンドとは、海外から日本へやってくる観光客やその需要のことです。これだけでも甚大な被害ですが、部品の調達網である「サプライチェーン」が寸断されて自動車などの国内生産が停滞することまで考慮すると、事態はさらに悪化します。
供給網のストップによる損失も含めると、経済の落ち込みは1.0ポイント以上になり、国内総生産(GDP)の額にして5兆円以上が失われる恐れがあるのです。GDPとは、日本国内で一定期間に新しく生み出されたモノやサービスの付加価値の合計であり、国の経済の大きさを表す指標です。もともと新型肺炎が拡大する前から、2020年の実質成長率は0%台半ば程度という極めて緩やかな予測が多かったため、今回の事態は致命傷になりかねません。
もし本当に年間を通してマイナス成長に陥るような事態となれば、それは激震が走った2011年3月11日の東日本大震災の年以来、実に9年ぶりの異常事態ということになります。外資系のUBS証券も、日本経済は消費増税直後の2019年10月から12月期に続き、2020年1月から3月期も2四半期連続でマイナス成長になる可能性が極めて高いと分析しており、日本の景気は今まさに崖っぷちに立たされていると言えるでしょう。
脱デフレに急ブレーキ?宿泊料下落がもたらす影
さらに、SMBC日興証券の予測では、2020年1月から3月期の「消費者物価指数(CPI)」が、生鮮食品を除く総合で0.1ポイント程度押し下げられる見込みです。CPIとは、私たちが普段購入する商品やサービスの価格の動きを総合的に表した、いわば「お財布の物差し」です。観光需要が急速に冷え込んだことでホテルなどの宿泊料が急落しており、これが物価を押し下げる主な要因として働いています。
編集部としては、旅行代金が安くなることは一見すると消費者にとって嬉しく思えますが、手放しでは喜べないと考えます。なぜなら、景気減速が深刻化すれば、宿泊料だけでなくあらゆる分野で物価の下落圧力が強まり、日本政府が長年目指してきた「脱デフレ」が遠のくからです。モノが売れずに価格が下がり、企業の業績が悪化して私たちの給与も下がるという、悪名高き「デフレ不況」への逆戻りだけは、何としてでも阻止せねばなりません。
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