自動化の未来を支える業界の巨人に、世界的な経済の荒波が押し寄せています。空気圧機器で世界シェアの約4割を誇るトップ企業のSMCが、2020年2月12日に最新の連結決算を発表しました。2019年4月から12月期における純利益は、前年の同じ時期と比べて24%減少の826億円となり、2年連続の最終減益を記録しています。
今回の業績低迷を引き起こした主な要因は、中国を中心とした製造業における設備投資の冷え込みです。米中貿易摩擦の長期化やスマートフォンの買い替え需要が一服したことで、多くの企業が投資に慎重になりました。さらに、為替が円高傾向に進んだことで発生した損失も、利益を押し下げる痛手となっています。
SMCの強みは、工場の自動化を推進するファクトリーオートメーション(FA)機器の製造です。同社が手がける空気圧機器は、圧縮した空気を利用して物を「つかむ」「持ち上げる」といったロボットの基本動作を可能にする基幹部品であり、工作機械や半導体を作る装置には欠かせない存在となっています。
しかし、今回最も苦戦を強いられたのが自動車分野です。世界最大の自動車市場である中国では新車販売が2年連続で前年を割り込んでおり、生産ラインに導入される産業用ロボット向けの需要が大きく減少しました。また、2020年に入り拡大している新型コロナウイルスの影響で工場の休業が長引けば、部品の調達網であるサプライチェーンにさらなる打撃を与える懸念もあります。
ネットやSNS上では「世界シェア4割のSMCが減益ということは、製造業全体の冷え込みは本物だ」「自動車業界の不況がこれほど波及するとは」といった驚きの声が上がっています。製造業の景気を測る「先行指標」として同社に注目する投資家も多く、今回の数字は市場に小さくない衝撃を与えたようです。
その一方で、明るい兆しも見え始めています。2019年10月から12月期の純利益は前年同期比11%減の290億円に留まり、7月から9月期に比べてマイナス幅が縮小しました。これは市場の事前予想であった255億円を大きく上回る数字であり、同社の底力を証明する形となっています。
復活の鍵を握るのが、同社の顧客の約2割を占めるとされる半導体関連です。現在は次世代の通信規格である「5G」の普及に向けた動きが活発化しており、北米やアジア地域を中心に半導体製造装置向けの引き合いが再び増加に転じています。どん底の状態から、先端技術の需要が同社を救い出しつつあるのです。
なお、2020年3月期の通期業績見通しについて、同社は従来の予想を維持しました。売上高は前期比10%減の5200億円、純利益は20%減の1050億円となる見込みです。世界的な不況の風に耐えながら、反転攻勢のチャンスを伺う展開が続くでしょう。
編集部の視点として、今回の決算は現在の世界経済の縮図そのものであると感じます。自動車産業の停滞は深刻ですが、5Gという巨大な技術革新が新たな救世主として台頭している点は見逃せません。目先の減益に一喜一憂するのではなく、次の産業のトレンドを見据えた同社の回復力に今後も期待したいところです。
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