過去最高を記録!世界粗鋼生産量が示す中国経済の活況と鉄鋼業界の未来

2019年5月、世界の鉄鋼業界に驚きをもたらすニュースが飛び込んできました。世界鉄鋼協会が発表した世界64カ国・地域の粗鋼生産量(速報値)は、前年同月比5.4%増の1億6274万トンを記録し、単月で過去最高を更新したのです。これは、実に37カ月連続のプラス成長という快挙であり、世界的な鉄鋼需要の底堅さを示す力強いデータと言えるでしょう。粗鋼生産量とは、鉄鉱石を加工して初めて作られる鋼(はがね)の原型のことで、建設や自動車などあらゆる産業の基盤となる材料の生産動向を示す重要な指標なのです。

この世界的な生産拡大を牽引したのは、やはり首位の中国です。中国の5月の粗鋼生産量は、前年同月比10%増の8909万トンとなり、こちらも単月での過去最高を塗り替えました。中国の生産増加は39カ月連続という驚異的なペースで続いており、背景には中国政府による景気刺激策が挙げられます。インフラ関連の建設プロジェクトなどで鋼材に対する国内需要が引き続き旺盛なのです。SNSでは「中国の建設ラッシュはまだ終わらないのか」「鉄鋼大手同士の統合もあって、今後どうなるのか」といった、巨大な中国経済の動向に注目する声が多く見受けられました。

中国では、この旺盛な需要を背景に、2019年6月初旬には最大手の宝武鋼鉄集団と9位の馬鋼集団が経営統合を発表しました。これは政府主導による鉄鋼業界の再編であり、将来的には過剰設備(需要に対して供給能力が過大である状態)の削減につながると期待されています。しかし、現在の粗鋼生産量は依然として極めて高い水準が続いており、供給過剰への懸念もくすぶっています。

米国もまた、生産を伸ばしている国の一つです。米国の5月の粗鋼生産量は765万トンで、前年同月比5.4%増と16カ月連続で増加しています。これは、輸入鋼材に対する関税の影響で海外からの供給が減った一方で、国内の鉄鋼メーカーが増産基調を維持しているためです。一方、日本と欧州の状況は対照的です。日本の5月の生産量は867万トンで、前年同月比4.6%減となりました。大型連休に伴う電炉(鉄スクラップなどを原料に鋼を生産する炉)の稼働減少が響いた形ですが、生産トラブルの影響は解消している状況です。

そして、欧州連合(EU)28カ国の生産量は1445万トンで、前年同月比2.8%減と6カ月連続のマイナスを記録しました。欧州では景気の減速が続いており、特に製造業向けの鋼材需要の減少が響いていると考えられます。このデータを見ると、世界の鉄鋼生産は、中国と米国が牽引する「伸びる地域」と、日本や欧州のように「停滞・減少する地域」の二極化が進んでいる様子が鮮明に見えてきます。これは、各国の経済状況や通商政策の違いが如実に表れている結果と言えるでしょう。

私見として、世界の粗鋼生産が過去最高を更新し続ける状況は、現在の世界経済が中国を中心としたインフラ投資に大きく依存している構造を再認識させます。特に中国の生産量が突出している点は、世界鉄鋼市場における中国の影響力の大きさを物語っており、今後の動向から目を離すことはできません。この高水準な生産が持続可能なのか、あるいは供給過剰に陥るのか、各国の経済政策や貿易摩擦の行方が、鉄鋼業界の未来を大きく左右するでしょう。

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