2019年6月28日、政府は「働き方改革」の旗印のもと、大きな一歩を踏み出すことを決定しました。それは、日本の行政の中枢である霞が関の中央省庁に勤務する職員が、2019年7月22日から8月2日までの期間、延べ3万人という大規模なテレワーク(在宅勤務など)を一斉に試行するというものです。これは、働く時間や場所を柔軟に選択できる新しい働き方を、国が率先して導入・浸透させようという明確な意思表示と言えるでしょう。
今回の試行は、政府の重要課題である「女性活躍・ワークライフバランス推進協議会」で正式に決定されました。この動きの背景には、来年夏に控える東京オリンピック・パラリンピック期間中の首都圏における交通渋滞を、今のうちから緩和していくという重要な狙いも含まれています。杉田和博官房副長官が「政府が率先して取り組み、柔軟な働き方を浸透させる絶好の機会」と述べていることからも、単なる一時的な試行ではなく、日本の労働環境全体を変えていくためのモデルケースとする意気込みが感じられます。
当初、政府は同期間で職員2万人規模のテレワークと時差出勤を計画していましたが、今回はテレワークに焦点を絞り、試行規模を3万人に拡大することとしました。これは、働き方改革に対する世間の関心の高まりと、実現に向けた政府の本気度を示すものと言えるでしょう。対象となるのは窓口業務や交代制勤務など、場所の制約がある業務に就く職員を除くすべての人たちです。局長級以上の管理職も、可能な限り参加することが奨励されています。
テレワークの実施にあたっては、各府省庁から貸与される端末を用いて共有ファイルへのアクセスや書類作成などが行われます。これまでも個々の省庁でのテレワーク導入事例はありましたが、このように数万人規模で一斉に、かつ短期間で集中的に取り組むのは、前例のないことです。特に防衛省や警察庁のような高度な機密性を要する機関においても、一部の職員には生体認証などのセキュリティ技術を駆使することで、外部への端末持ち出しが認められるとのことです。この「セキュリティと利便性の両立」は、今後のテレワーク普及の鍵を握る重要な要素になるはずです。
情報セキュリティの課題を乗り越え、新しい働き方を定着させる
この大規模なテレワーク試行は、SNSでも大きな反響を呼んでいます。「いよいよ日本の組織も変わるのか」「ぜひ成功させてほしい」といった期待の声が上がる一方で、「本当に3万人もの業務が滞りなくできるのか」「情報漏洩のリスクはないのか」といった、実務やセキュリティ面での懸念も同時に示されています。しかし、私はこの政府のチャレンジを高く評価すべきだと考えます。
「テレワーク」とは、情報通信技術(ICT)を利用し、時間や場所にとらわれずに働く柔軟な就業形態のことです。これによって、育児や介護と仕事の両立、地方での就業機会の創出など、多様な働き方が実現可能になります。今回の試行は、政府自らがそのリスクを負ってでも、この新しい働き方を本格的に導入しようという強い意志の表れであり、日本全体に波及効果をもたらす可能性を秘めているのです。
政府は、東京オリンピック期間中の交通対策として、都内の一部で交通量を20~30%抑制するという高い目標を掲げています。その実現のため、今回の試行期間後も、民間企業にもテレワークの推進を強力に呼びかける方針です。中央省庁の成功事例は、民間企業が抱える「セキュリティ不安」や「管理体制の構築」といった課題を乗り越えるための具体的なノウハウと自信を与えることでしょう。官民一体となって、首都圏の混雑緩和と、より生産的で柔軟な社会の実現を目指していくことに、大きな期待が持てるでしょう。

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