2019年6月26日までに厚生労働省が発表した「2018年度障害者雇用実態調査」は、日本の雇用環境における大きな変化を鮮明に示しました。全国の民間企業で働く障害者の数は、推計で実に82万1千人となり、これは過去最多を大きく更新する数値です。直近の5年間、つまり前回の調査と比較してみますと、その増加数は19万人にも上るのです。
この劇的な増加の背景には、2018年4月に施行された法定雇用率の引き上げが挙げられます。法定雇用率とは、企業が雇用する従業員に占める障害者の割合を法律で義務付けた基準のことで、この基準が従来の2.0%から2.2%へと引き上げられました。もちろん、制度的な後押しだけではありません。企業側がダイバーシティ(多様性)の重要性を認識し、多様な人材を受け入れる意識が高まっていることも、この結果を支える大きな要因と見られています。
この調査結果に対して、SNS上では「企業の意識が変わってきているのは素晴らしい」「法定雇用率だけでなく、働きやすい環境づくりも進んでほしい」といった、ポジティブな反響が多数見受けられます。一方で、「非正規雇用の割合の低さが気になる」「精神障害のある方の増加は喜ばしいが、定着支援も重要だ」といった、雇用形態や働き方の質に関する課題を指摘する声も多く、今後の改善点として議論を呼んでいる状況です。
内訳を見てみると、身体障害が42万3千人、知的障害が18万9千人、精神障害が20万人、そして発達障害が3万9千人という結果になりました(※複数の障害を持つ方はそれぞれ別に計上されています)。注目すべきは精神障害を持つ方の雇用数の伸びです。集計方法が変更されたため単純な比較はできませんが、前回の調査(4万8千人)と比較すると、その増加幅は驚くべきものがあり、企業が精神的なハンディキャップを持つ人材の採用に積極的に取り組む姿勢が読み取れるでしょう。
しかしながら、雇用形態には依然として大きな偏りが見られます。障害者に占める正社員の割合は、身体障害を持つ方が52.5%で最も高い水準にあります。これに対し、精神障害を持つ方は25.5%、発達障害を持つ方は22.7%、そして知的障害を持つ方は19.8%に留まっている状況です。この数字は、特に精神・発達・知的障害を持つ方々にとって、安定した雇用形態である正社員のポストが十分に提供されていないという、日本の雇用市場が抱える構造的な課題を示唆していると言えるでしょう。せっかく雇用が進んでも、非正規雇用のままでは、将来的なキャリア形成や生活の安定に不安が残ります。
多様な働き方と求められるきめ細やかな配慮
勤務時間についても見てみましょう。全ての障害区分において、週30時間以上のフルタイムに近い労働時間が最も多い結果となりました。これは、多くの障害者が一般の労働者と同様に、企業活動の主要な担い手として活躍していることを示しています。まさに、障害の有無に関わらず、その能力を発揮できる場が広がっている証左と言えるでしょう。
また、就いている仕事の分野別では、身体障害の方は事務系の仕事、知的障害の方は生産系(製造など)、精神障害の方はサービス系、発達障害の方は販売系の職種に就く割合が最も高くなりました。これは、それぞれの障害特性や得意なことを活かした職域でのマッチングが進んでいることを示唆しており、企業が個々の適性を考慮した配置に努めていることが伺えます。例えば、細やかな手作業やルーティンワークを得意とする知的障害の方は生産系で、対人コミュニケーション能力を活かせる発達障害の方は販売系で活躍しているという構図です。
私自身の意見としては、この「障害者雇用82万人超え」というニュースは、日本社会が多様な価値観を受け入れ、誰もが活躍できる社会へと確実に歩みを進めていることを示す、極めて重要なデータだと考えます。しかし、先に述べた正社員比率の偏りや、精神・発達障害の方の増加に伴う職場での適切な配慮(合理的配慮と呼びます)の提供は、今後さらに注力すべき点です。合理的配慮とは、障害のある人が、ない人と同じように社会生活や職業生活を送るために、過度な負担にならない範囲で提供される配慮のことです。
この調査は、2018年6月時点で常用労働者5人以上の民間企業から約9,200社を無作為に抽出して実施された推計に基づくものです。数値の増加は喜ばしい一方で、この勢いを**「質」の向上**、すなわち安定した雇用、キャリアアップの機会、そして個々人に最適化された働きやすい環境の整備へと繋げていくことが、私たち社会全体に課せられた次なるミッションではないでしょうか。今後も、すべての人がその能力を最大限に発揮できるインクルーシブな社会の実現に期待したいものです。
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