私たちの頭上を行き交う飛行機は、人を運ぶだけでなく、世界経済の血液とも言える「モノ」を運んでいます。しかし今、その血流に明らかな滞りが生じているのをご存知でしょうか。2019年5月29日、国際航空運送協会(IATA)が発表したデータは、多くの経済関係者を戦慄させました。4月の世界の航空貨物需要が、前年の同じ月に比べて4.7%も減少してしまったのです。
このニュースに対し、SNSなどのネット上では「景気後退のサインではないか」「米中の喧嘩がここまで影響するとは」といった不安の声が広がっています。中には「航空会社の株価が心配だ」という投資家たちの悲鳴も聞かれました。原因として挙げられているのは、泥沼化する米中貿易戦争や、出口の見えない英国の欧州連合(EU)離脱問題です。政治的な混乱が、実体経済に暗い影を落とし始めていると言えるでしょう。
「世界の工場」アジアを襲う6ヶ月連続の不振
今回の発表で特に深刻なのが、私たちのアジア太平洋地域です。減少幅は全地域の中で最大の7.4%を記録し、これで6ヶ月連続のマイナスとなってしまいました。なぜこれほど落ち込んでいるのでしょうか。それは、この地域が部品の製造や組み立てを行う「世界の工場」であり、米国の追加関税の影響を直撃しているからです。モノが作られず、運ばれない。その連鎖が止まりません。
ちなみに、ここで言う「貨物需要」とは、単に荷物の個数を数えたものではありません。「重量」に「輸送距離」を掛け合わせた数値で算出されます。つまり、重いものが遠くへ運ばれなくなるほど、この数字は悪化します。欧州でも6.2%の減少が見られ、特に経済大国であるドイツからの輸出が減速しているのが痛手です。
空からの警告を無視してはいけない
IATAのアレクサンドル・ド・ジュニアック事務局長は、「今年の傾向は明らかにマイナスだ」と断言しました。私自身の考えを述べさせていただくと、これは単なる航空業界の不振というニュースで片付けてはいけない問題です。航空貨物は、船便よりも緊急性の高い、あるいは高付加価値な製品が多く利用されます。ここの数字が落ちるということは、世界経済の活力が失われている最も敏感な証拠なのです。
さらに頭の痛い問題として、燃料価格の上昇も続いています。荷物は減り、飛ばすためのコストは上がる。航空会社にとっては、まさに泣きっ面に蜂の状態と言えるでしょう。大国同士の「貿易の緊張」が解消されない限り、この負のスパイラルは止まりそうにありません。空からの警告は、私たちの生活や懐事情にも、やがて静かに、しかし確実に降りかかってくるはずです。
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