アルコール除菌スプレーを食器や調理器具に直接使うことに、抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。特に小さなお子さんがいるご家庭では、その安全性が気がかりになるものです。そんな悩みを解決する、画期的な商品が、マヨネーズでおなじみのキユーピーから登場しました。それが、食品由来成分のみで作られた除菌スプレー「K Blanche(ケイブランシュ)」です。食品メーカーならではの安心感で、食器や手に直接吹きかけても拭き取りが不要という手軽さが、子どものウイルス性胃腸炎対策など、家庭内の衛生管理のシーンを大きく広げています。
この「ケイブランシュ」は、キユーピーの主力製品であるマヨネーズの原料、鶏卵に関する長年の研究から生まれました。同社ファインケミカル本部の坂部展久氏によると、彼らが着目したのは、卵の白身に含まれる酵素「リゾチーム」が、黄身をウイルスから守るという特性でした。リゾチームとは、微生物の細胞壁を分解する働きを持つ酵素のことで、人を含む多くの生物に存在する天然の防御システムを担うタンパク質です。このリゾチームを加熱することで、ノロウイルスに対して一定の効果があることを突き止め、東京海洋大学と共同で「ノロクリアプロテイン」という抗ウイルス成分の開発に成功しました。この成分は、ノロウイルスだけでなく、A型肝炎ウイルスにも効果が確認されているというから驚きですね。
「ノロクリアプロテイン」を配合した「ケイブランシュ」は、前述の通り、キッチンや食卓で、お皿などに直接スプレーして使えるのが最大の特長だと坂部氏は語ります。お子さんが使うものや、誤って口に入ってしまう可能性があるものにも、安心して使える点が非常に優れているのです。この食品由来という特性を活かし、今後はキッチン用除菌スプレーという枠を超え、他の日用品や医薬品への応用も視野に入れているようです。記事が制作された2019年5月31日時点では、インターネット通販のみでの販売ですが、「認知が拡大すれば雑貨店などでの販売も検討したい」と広報部は述べており、さらに日用品メーカーや医薬品メーカーへの成分そのもののBtoB(企業間取引)販売も進めている段階にあるとのこと。
近年、感染症は季節を問わず発生しており、ウイルス性胃腸炎や食中毒などへの衛生意識はますます高まっています。この背景から、食品由来の除菌スプレーという「ケイブランシュ」の需要が高まることは間違いありません。しかし、この商品の魅力は、その高い安全性と除菌効果だけに留まりません。そのパッケージデザインが、SNS(交流サイト)を中心に大きな反響を呼んでいるのです。
このデザインは、インスタグラムやツイッターといったSNSの流行を背景とした「映え」文化を意識し、家具やキッチンとの調和を考えた白を基調としています。表面にはさりげなく卵の模様があしらわれ、シンプルながらも洗練された雰囲気を醸し出しています。このため、小さい子どもを持つお母さんや、受験を控えたお子さんを持つ親御さん、さらにはインテリアにこだわりを持つ女性など、幅広い層が抵抗なく手に取りやすいデザインに仕上がっているのです。ブランド支持層に女性が多いキユーピーならではの、細やかな気遣いが感じられる工夫と言えるでしょう。
キユーピーの連結売上高の約7割はマヨネーズなどの加工食品ですが、実はこの「ケイブランシュ」が生まれたファインケミカル事業も、高い収益性から注目を集める分野です。ヒアルロン酸や卵由来成分などの高付加価値な素材を扱うファインケミカル事業は、高齢化や健康意識の高まりを背景に、今後の成長が大きく期待されています。裏方的な事業であったファインケミカルから生まれた「ケイブランシュ」は、キユーピーの新たな顔として、大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。安全安心な暮らしを支えるタマゴの秘められた力が、私たちの生活をより豊かで清潔なものに変えてくれると確信しています。
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