2019年08月23日、私たちの暮らしに最も身近なコンビニエンスストアや化粧品業界で、劇的な変化が起きようとしています。あらゆるモノがインターネットに接続される「IoT(モノのインターネット)」という技術が、店舗の裏側から美容のあり方までを再定義しているのです。単に便利になるだけでなく、これまでのビジネスモデルを根底から覆すような革新的な取り組みが次々と始まっています。
東京都千代田区にある「セブン-イレブン 千代田二番町店」では、最先端の実証実験が公開されました。冷凍食品の販売ケースをじっくり観察すると、扉の上部に小さなスイッチ型のセンサーが設置されていることが分かります。このデバイスは扉の開閉回数を正確にカウントする役割を担っており、他にも温度を感知するセンサーなど、1店舗だけで合計120個ものIoT機器が稼働しているというから驚きです。
セブン-イレブン・ジャパンの大橋尚司取締役は、故障した後に修理するのではなく、事前に異常を察知してトラブルを防ぐ「予防保守」の重要性を強調しています。全国に2万店を超える店舗を構える同社にとって、管理すべき冷蔵・冷凍設備は約80万台という膨大な数にのぼります。これまでは年間20万回も作業員を派遣していましたが、IoTによる一括監視が実現すれば、このコストを劇的に削減できるでしょう。
この取り組みは、私たち利用者にとっても非常に大きなメリットをもたらします。24時間体制で厳密な温度管理が行われることで、商品の鮮度が常に最高水準で保たれ、「食の安心・安全」がより確固たるものになるからです。セブン-イレブンでは2020年度以降の本格導入を目指しており、2万店舗の設備をクラウド上で一元管理するという世界でも類を見ない規模のプロジェクトが進んでいます。
SNS上では「コンビニの冷蔵庫がネットにつながるなんてSFの世界みたい」「アイスが溶けているようなトラブルがなくなるのは嬉しい」といった、期待に満ちた声が多く上がっています。技術の進歩が、目に見えないところで私たちの「当たり前の日常」を支えようとしている事実に、多くの人々が関心を寄せているようです。まさに、インフラとしてのコンビニが次の一歩を踏み出した瞬間と言えるでしょう。
パーソナライズ化する美容業界と海外勢の「無人店舗」攻勢
一方で、IoTは個人のニーズに寄り添う「究極のカスタマイズ」も可能にしました。資生堂が2019年07月に本格販売を開始した「オプチューン」は、スマートフォンと専用マシンを連動させる世界初のシステムです。アプリで肌の状態を撮影すると、その日の気温や湿度、さらには利用者のコンディションに合わせて、8万通りものパターンから最適な配合のスキンケアを提供してくれます。
これまでは百貨店のカウンターへ足を運び、対面で相談するのが化粧品選びの主流でした。しかし、このIoT化粧品の登場により、自宅にいながらプロの診断を受けたかのようなケアが受けられるようになります。既存の流通や販売の仕組みを根本から変えてしまうこのサービスには、筆者も「美のパーソナライズ化」という新しい時代の幕開けを感じずにはいられません。
しかし、技術革新は同時に、異業種からの強力なライバルを招き寄せています。アメリカのアマゾン・ドット・コムが展開する「アマゾン・ゴー」や、中国の京東集団(JDドットコム)による無人スーパーがその筆頭です。店内のカメラやセンサーが客の動きと商品の動きを完全に把握し、レジを通らずに退店するだけで決済が完了する仕組みは、従来の小売業にとって大きな脅威となっています。
日本国内でもローソンなどがレジ無人化の実験を行っていますが、雇用の維持といった課題もあり、本格的な普及には慎重な姿勢が目立ちます。一方、しがらみのない海外勢や新興勢力は、圧倒的なスピード感でIoTを武器に市場を席巻しようとしています。日本の小売り各社が、この「台風の目」に対してどのような独自価値を打ち出していくのか、今まさに正念場を迎えているのです。
筆者の見解としては、単なる省人化を目指すだけでなく、セブン-イレブンのように「品質向上」に技術を振るう姿勢こそが、日本市場での成功の鍵になると考えます。技術を「人間の代わり」にするのか、それとも「人間をサポートするもの」にするのか。IoTがもたらす変革の本質は、そうした企業のフィロソフィーが問われる部分にあるのではないでしょうか。今後の展開から目が離せません。
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