かつて大学生の就職人気ランキングで不動のトップを誇った「銀行」という聖域に、今、かつてない激震が走っています。2019年11月20日現在、就職戦線を戦う学生たちの間では、銀行に対するイメージが劇的に変化しているようです。ある学生は「ドラマ『半沢直樹』のような過酷な修羅場には耐えられない」と語り、またある内定者は友人から「大変そうだね」と憐れみの声をかけられる始末です。かつてのエリートの代名詞は、今や「敬遠したい業界」へと変貌しつつあるのでしょうか。
数字を見れば、その異変は明らかです。就職情報大手マイナビの調査によれば、2019年卒から2020年卒にかけて、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループといったメガバンク各社は、軒並みランキングの順位を落としています。特に衝撃的なのは、銀行業界の「将来性」に関する評価が、全業界でワースト1位に転落したことでしょう。SNS上でも「銀行はオワコン」「リストラが怖い」といった悲観的な投稿が散見され、若者の銀行離れは深刻な局面を迎えています。
マイナス金利の逆風と「3万2000人」の業務削減という現実
この人気の急落には、明確な背景が存在します。2016年から続く「マイナス金利政策」により、預金と貸出金の利ざや、つまり銀行が本来得意としていた「お金を貸して利息を得る」というビジネスモデルが通用しにくくなっているのです。金利が極めて低い状態では、銀行の収益力は低下せざるを得ません。現場では厳しいノルマに追われ、興味のない顧客に投資信託を勧めなければならない苦悩から、異業種へ転職を決意する若手行員も後を絶たないのが現状です。
さらに追い打ちをかけるのが、テクノロジーによる構造改革です。メガバンク3行は、ITの活用によってグループ全体で約3万2000人分の業務削減を目指すと発表しました。2020年卒の採用人数は、リーマン・ショック前の3分の1にまで絞り込まれる見通しです。「大量採用・終身雇用」というかつての銀行の安定神話は、今まさに崩壊しようとしています。私自身、この変化は健全な新陳代謝であると感じる一方で、既存の行員が抱く「自分はお荷物になるのではないか」という不安は察するに余りあります。
逆境だからこそ輝く「専門性」と理系知見の融合
しかし、こうした向かい風の中でも、敢えて銀行という門を叩く「新世代のバンカー」たちが現れています。ある国立大学院の理系学生は、大手IT企業の内定を辞退してメガバンクを選びました。彼が狙うのは、複雑な数学的手法を用いてマーケットを分析し、資産を守る戦略を練る高度な金融専門職です。今の銀行には、単なる御用聞きではない、財務や会計、そしてデータサイエンスを駆使した「プロフェッショナルとしての安定」を求める賢明な学生たちが集まり始めています。
また、銀行が持つ圧倒的な「顧客網」と「信用」は、新興のIT企業(フィンテック)にはない最大の武器です。フィンテックとは「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を掛け合わせた造語ですが、IT企業が躍起になって金融参入を目指すのは、銀行が持つ膨大なデータと実績に価値があるからに他なりません。銀行側もこれに対抗し、AIを活用した顧客サービスの改善や、農業、ヘルスケアといった社会課題を解決する新規事業の創出に、インターンシップを通じて本腰を入れています。
今の銀行に必要なのは、過去の成功体験に縋る人ではなく、変化を楽しみながら新しいビジネスを「創造」できる人材です。みずほフィナンシャルグループの分析では、従来の銀行志望者は創造的思考力が課題であると浮き彫りになりましたが、これは逆を言えば、変革期にある今こそ、野心的な若者にとってチャンスの宝庫であることを意味しています。銀行は今、古い皮を脱ぎ捨て、新たな成長モデルへと進化する当事者たちにそのバトンを託そうとしているのです。
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