2019年6月4日、医療現場に衝撃的な提言が発表されました。これは、入院中の患者さんがベッドなどから転落・転倒し、頭を打って亡くなるという痛ましい事故について、日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)が分析を行った結果に基づくものです。分析対象となった11人の死亡患者さんのうち、じつに8人の方が、頭部を強打した直後には意識がしっかりしていたにもかかわらず、その後に症状が急激に悪化して命を落とされていたという事実が明らかになったのです。
こうした事故の多くは、「急性硬膜下血腫」といった、頭蓋骨の内側で出血が起こる重篤な病態を招いていました。出血によって脳が圧迫されてしまう状態を指す「急性硬膜下血腫」は、一刻を争う緊急性の高い疾患です。機構は、これらのケースでは、もっと早く適切な対応がとられていれば、救命できた可能性が高いと指摘しています。この結果は、私たち医療従事者にとって、安全管理に対する意識を根本から見直すきっかけとなるでしょう。
この提言で強く推奨されているのが、転落や転倒があった患者さんに対しては、たとえ目立った異常が観察されなくても、「コンピューター断層撮影装置(CT)」による頭部検査を速やかに実施することです。CTとは、X線を使って身体の内部を画像化する装置のことで、脳内の出血や骨折などを詳細に捉えることができます。意識が清明な状態でも、頭の中で少しずつ出血が進んでいる「隠れた危険」を見逃さないためには、このCT検査が不可欠であると考えられます。
SNS上でも、「入院中に限らず高齢者の転倒は怖い」「まさか意識があってもすぐに亡くなるなんて」といった、驚きと共感を示す声が多く見受けられました。特に、ご高齢の家族を持つ方々からは、「万が一に備えて、病院側にもっと厳重な対策をとってほしい」という切実な願いが寄せられています。今回の提言は、患者さんの命を守るための、医療安全の「新たなスタンダード」となり得るでしょう。
機構は、医療事故調査制度が開始された2015年10月から昨年末までに発生した、転落などによる死亡事故18件のうち、頭部外傷と死亡との因果関係が明確な11件を特に詳しく分析しました。亡くなった患者さんは全員が60歳以上で、そのうち7割にあたる7人が、血液を固まりにくくする薬を服用していたことも判明しています。この種の薬剤は、もし頭部で出血が起こった場合に、その出血量を増大させ、症状を急速に悪化させる大きな要因になったと推測されます。高齢の患者さんや、抗凝固薬(血液が凝固しにくくなる薬)を服用されている方に対しては、特に厳重な注意が必要だと痛感いたします。
提言では、具体的な予防策として、ベッドからの転落を防止するための「ベッド柵」の適切な使用や、頭部を保護する「保護帽」を患者さんに着用させることなどが提案されています。これらの物理的な対策は、事故そのものを防ぐだけでなく、万一転倒してしまった際にも、頭部への衝撃を和らげる効果が期待できます。私たち編集部としても、医療現場にはこの提言を真摯に受け止め、検査体制の強化と予防策の徹底を通じて、入院中の患者さんが安心して療養できる環境を整えていただきたいと強く願っております。
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