IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)が、未来のビジネスシーンを塗り替える大胆な一手を打ち出しました。南場智子会長は2019年07月25日、日本経済新聞の取材に対し、今夏にも設立予定である100億円規模のベンチャーファンドについて、その出資枠の半分を「独立する自社社員」に充てるという驚きの構想を明かしたのです。かつては会社を去ることは「卒業」とも称されましたが、これからは資本関係を持った強力なパートナーとして、共に成長を目指す時代が到来するのかもしれません。
このプロジェクトには、かつて米国支社で戦略を練り上げた渡辺大氏が参画します。現在はシリコンバレーを拠点にする彼が、運用を主導するゼネラル・パートナー(GP)を務める予定です。GPとは、投資の意思決定から実行、そして投資先の育成までを担う、いわばファンドの司令塔のような存在を指します。DeNAの元幹部らが知見を惜しみなく提供し、事業の立案から外部との連携までをバックアップする体制は、独立を夢見る社員にとってこれ以上ない追い風となるでしょう。
「ベンチャービルダー」が加速させる世界進出への道筋
今回の取り組みの核心は、「ベンチャービルダー」という革新的な仕組みにあります。これはゼロから事業の種を育て、そこへ有望な経営者を据えて会社を立ち上げる手法のことです。創業時から強固なネットワークやリソースをフル活用できるため、通常よりも格段にスピーディーで円滑な事業運営が期待できます。南場会長は、こうした社内出身のスタートアップに対し、早い段階からアメリカや中国といった巨大市場への進出を後押ししたいと、力強い意気込みを語っています。
SNS上ではこのニュースに対し、「DeNAらしいアグレッシブな試みだ」「起業したい優秀な人材が集まる磁石になるのではないか」といった期待の声が数多く寄せられています。投資期間は10年を見込んでおり、1社あたり最大で15億円という手厚い資金提供も検討されているようです。原則として少額出資からスタートするものの、事業の相乗効果が期待できる場合には、株式の過半数を取得してグループ内に取り込む柔軟な姿勢も見せています。
一方で、この背景には現在のDeNAが直面している厳しい経営状況があります。2019年03月期の連結決算では、売上高が前の期から11%減少して1241億円となり、営業利益にいたっては51%減の135億円と、収益の柱であるゲーム事業の失速が鮮明になりました。配車サービスなどの新規事業がまだ利益の柱に育ちきっていない中で、次なる成長の種を社外へ広がる「緩やかな企業群」の中に求めているのが、現在の同社のリアルな姿と言えます。
編集者の視点から言えば、この試みは単なる投資事業を超えた「人材の流動化」への挑戦だと感じます。南場会長が懸念するように、起業の意志はあっても行動に移せない社員が増えている現状を、あえて「公式な独立ルート」を作ることで打破しようとする発想は実にユニークです。たとえ事業に失敗したとしても、その挑戦のプロセスを会社の資産として評価するという姿勢は、変化の激しい令和のビジネス界において、真に強い組織を作るための正解の一つかもしれません。
コメント