2019年08月18日に行われた横浜DeNAベイスターズとの一戦で、広島東洋カープの菊池涼介選手がまたしても日本中のプロ野球ファンを驚かせました。DeNAのエース、今永昇太選手が放った二塁前への力ないゴロに対し、菊池選手は猛然とダッシュを開始します。一瞬の出来事すぎて、リアルタイムでは何が起きたのか理解できなかった観客も多かったはずです。しかし、一塁塁審の右手が力強く挙がったとき、スタジアムは驚きと称賛の渦に包まれました。
テレビの中継映像をスローで確認して、ようやくその異次元の動きが判明したのです。彼はグラブでボールを捕球したその刹那、持ち替えることなく「バックハンドトス」を一塁へ繰り出していました。バックハンドトスとは、捕球したグラブをそのまま使い、手の甲側へ放るように送球する高度な技術を指します。これ以外の方法では決してアウトにできなかったであろう、まさにコンマ数秒を争う究極の判断が生んだ名人芸と言えるでしょう。
このプレーに対し、SNS上では「人間業ではない」「忍者が紛れ込んでいる」といった驚愕の声が次々と上がっています。ネットメディアの編集者である私自身も、彼のプレーを見るたびに胸が躍るのを禁じ得ません。単なる身体能力の高さだけでは説明がつかない、芸術的な美しさすら感じさせる守備は、もはやプロ野球の枠を超えたエンターテインメントです。多くのファンが彼の守備を見るためだけに球場へ足を運ぶ理由が、この一つのプレーに凝縮されています。
「遊び」が育む応用力と固定概念からの脱却
なぜ菊池選手は、このようなアクロバティックな守備を涼しい顔で披露できるのでしょうか。その秘密は、試合前に行われる日々の守備練習に隠されています。彼はノックを受ける際、あえて教科書通りの捕球をしません。わざとイレギュラー、つまり予測不能なバウンドをさせて捕ってみたり、無理な体勢から送球を試みたりしています。こうした「遊び」を取り入れた練習が、本番の緊迫した場面で自由な体の動きを引き出しているのだと推察されます。
もちろん、こうした応用動作は、揺るぎない「正調(基本の型)」があってこその「破調(変化)」であることは言うまでもありません。基礎が完璧に身についているからこそ、そこから外れる勇気を持てるのです。今シーズン途中に楽天から移籍してきた三好匠選手も、この「遊び」の重要性に気づかされた一人だそうです。かつては真面目すぎるがゆえに基礎に縛られ、動きに硬さが出ていた彼ですが、コーチからの助言で「遊び」を取り入れるようになり、劇的な変化を遂げました。
三好選手は、菊池選手の守備について「ガチガチに堅実なのではなく、遊びがあるからイレギュラーにも反応できる」と分析しています。かつてのアマチュア指導では「ゴロは必ず正面で捕れ」という教えが絶対的でしたが、今やその「縛り」が選手の可能性を狭めている側面も否定できません。私は、プロの世界で活躍する彼らの姿こそ、現代のスポーツ指導、さらには私たちの仕事や人生における柔軟性の重要性を体現していると感じてやみません。
どんなに優れた技術や体力を備えていても、心が「こうあるべきだ」という制約に縛られていては、土壇場で最高のパフォーマンスは発揮できないでしょう。菊池選手の軽やかな動きは、型にとらわれない「心の可動域」の広さから生まれているのです。2019年08月22日現在、ペナントレースは佳境を迎えていますが、彼の守備が放つ自由な空気感は、プレッシャーのかかる戦いの中でチームに何物にも代えがたい勇気を与え続けるに違いありません。
コメント