将棋界が熱い視線を送るビッグタイトル戦、第67期王座戦五番勝負が、いよいよ2019年9月2日に幕を開けます。今回、斎藤慎太郎王座に挑戦するのは、飛ぶ鳥を落とす勢いの永瀬拓矢叡王です。2019年に念願の初タイトルを獲得したばかりの永瀬叡王ですが、その表情に慢心は一切ありません。むしろ「もっと地力をつけなければ」と、さらなる高みを目指して懸命に準備を進める姿が印象的です。
今回の五番勝負において、永瀬叡王は本戦4局すべてを先手番で勝ち上がってきました。他の棋戦ではこれほど極端な偏りはないそうですが、王座戦に関しては不思議と先手番に縁があるようです。対局を控えた現在の心境について、永瀬叡王は「調子は良くも悪くもない。ここから上げていかなければならない」と、自分自身を厳しく律しながらも、静かな闘志を燃やしています。
本棋戦の持ち時間は、チェスクロック方式で各5時間と設定されています。チェスクロック方式とは、ボタンを押した瞬間に残り時間が確定する計測方法で、1分未満を切り捨てる従来の「ストップウォッチ方式」とは異なり、1秒単位の正確な時間管理が求められます。永瀬叡王はすでに叡王戦でこの方式を経験しており、「時間配分がしやすく、わかりやすい」と前向きに捉えているようです。
また、今回の対局では夕食休憩が30分に短縮されるという変更点もあります。永瀬叡王といえば、対局中に栄養補給としてバナナを頬張る姿が有名で、「食べることも仕事」という独自のプロ意識を持っています。短い休憩時間をどう活用し、集中力を維持するのかという点も、勝負の行方を左右する面白いポイントになるでしょう。こうした盤外の工夫も、現代将棋の重要な要素と言えます。
対戦相手の斎藤慎太郎王座について、永瀬叡王は「切れ味の鋭い居飛車党であり、粘り強さを武器に結果を出している作戦家」と分析しています。居飛車党とは、序盤から飛車を元の位置(右側)に据えて戦うスタイルを指します。「攻めの斎藤」と「受けの永瀬」という対照的な棋風の二人がぶつかり合う今シリーズは、まさに矛と盾が激突するような展開が予想されます。
SNSやファンの間では、実家が横浜市内で人気の家系ラーメン店を営んでいるという永瀬叡王の親しみやすいキャラクターも話題です。しかし、一度盤面の前に座れば、その執念深い受けの粘りは「軍曹」の異名をとるほど強固なものです。同世代との対局が少ないという永瀬叡王にとって、若き実力者である斎藤王座との対決は、非常に楽しみな挑戦であるに違いありません。
編集部としては、永瀬叡王の「危機感こそが成長の原動力」というストイックな姿勢に、次世代の王者としての風格を感じずにはいられません。初戦は2019年9月2日に神奈川県秦野市の「陣屋」で始まります。その後、2019年9月18日の大阪、2019年10月1日の神戸へと続くこのシリーズが、将棋史に残る名局となることを期待して止みません。皆様もぜひ、世紀の決戦をその目に焼き付けてください。
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