米国のウーバーテクノロジーズ社が、来るべき「空飛ぶタクシー」市場において、その主導権を確立しつつあります。同社は、2019年6月11日から米国のワシントンで開催された、世界各国の航空当局関係者を集めた開発者会議「ウーバー・エレベート・サミット」において、アメリカ合衆国だけでなく、オーストラリアのメルボルンでも商業化を目指す計画を発表いたしました。この動きは、複数の都市に誘致を競わせるという戦略を通じて、次世代の移動サービスを早期に実現するための規制緩和を引き出そうとする、ウーバーの強い意欲を示しているといえるでしょう。
ウーバーが主催するこのサミットは、今回で3回目の開催となりました。興味深いことに、これまでのカジュアルなポロシャツ姿とは一転し、今回は同社の幹部が揃ってスーツ姿で登壇しました。政治の中心地であるワシントンDCにおいて、シリコンバレー流のスタイルを封印し、規制当局や政府関係者に対する真摯な姿勢を見せたことは、新サービスの実現に向けた本気度を伺わせます。会議には、エレイン・チャオ米運輸長官も駆けつけ、「開発者の方々は、公的機関と早い段階から、かつ頻繁に連携することが極めて重要です」と発言しました。長官は「勝者と敗者を恣意的に分けるようなことはしません」と公平性を強調しつつも、ウーバーが推し進める事業化を後押しする考えを明確に示されました。
実機のデモンストレーションといった派手な演出こそありませんでしたが、メルボルンなど候補都市の関係者を含め、会議への参加者は約1,500名に達し、業界の注目度の高さが窺えます。ウーバーが「エア(Uber Air)」と呼ぶこの新サービスは、垂直に離着陸できる電動の小型飛行機、すなわちeVTOL(イー・ブイトール:electric Vertical Take-Off and Landing機)を用いる都市内移動サービスです。ヘリコプターと比較して騒音が大幅に軽減されるため、ビルや駐車場の屋上といった場所に離着陸場を設置しやすいという大きなメリットがあります。ウーバーは、アメリカ合衆国とオーストラリアの3都市で2020年に実証実験を開始し、2023年の商用化を目指す計画であり、初期段階として2023年末までに世界で約50機程度の運航を予定しているとのことです。
「エア」の予約は、既存のウーバーのスマートフォンアプリから項目を選択するだけで、小型機の離着陸場までの自動車による移動サービスも含めて手配できるようになります。初期の運航コストは、飛行距離あたりでヘリコプターの3分の2程度になる見込みですが、将来的には自家用車と同等のコスト水準にまで引き下げる目標を掲げているそうです。空飛ぶクルマの開発競争は激化しており、米アルファベット(グーグルの持ち株会社)のラリー・ペイジCEOや日本のトヨタ自動車などもスタートアップ企業を積極的に支援しています。しかし、都市の上空を安全に飛行させるための具体的なルール作り、特にアメリカ合衆国においても、その整備はほとんど手つかずの状態が現状の大きな課題といえるでしょう。
この事業を統括するエリック・アリソン氏は、「今回の革新的な技術開発は、あらゆる産業の中でも最も厳格な規制が敷かれている航空業界の中で起きているのです」と述べています。これまでのウーバーは、規制のグレーゾーンを巧みに活用してライドシェア(相乗り)サービスを世界中に広げてきましたが、この新しい空のサービスの実現には、規制当局との円滑な協調関係が不可欠です。この点において、ウーバーの持つ柔軟な交渉能力が、まさに試されているといえるでしょう。
一方で、日本の動きはどうでしょうか。日本国内でも、2018年8月には国土交通省と経済産業省が主導し、「空の移動革命に向けた官民協議会」が発足しました。この協議会には、SUBARU(スバル)や日本航空(JAL)、ANAホールディングスといった大企業が参加しており、同年12月には、2023年を目標として空飛ぶクルマの事業化を目指すロードマップが策定されました。しかし、日本の法体系では、空飛ぶクルマは航空法の規定する航空機として位置づけられる見解が一般的であるものの、アメリカ合衆国と同様に、具体的な許認可手続きや安全基準などは未だ整備されていません。
特に、建物が密集し、人口密度が世界的に見ても非常に高い日本の都市部においては、高度な安全性をいかにして確保するのかが最大の難題です。既存の航空機が利用する空域との明確なすみ分け、そして使用する電波の周波数調整に加え、万一の事故が発生した際の被害者救済ルールや、適切な保険制度の構築も急務となっています。経済産業省は、日本における空飛ぶクルマの導入は、まずは離島や山間地域での貨物輸送から始まる可能性が高いと予測しており、都市部での本格的な利活用は、アメリカ合衆国などと比較して遅れる2030年代以降になるだろうという見通しを示しています。
SNS上では、「空飛ぶタクシー」に関するニュースは非常に大きな反響を呼んでおり、「未来が現実になる」「SFの世界がすぐそこまで来ている」といった期待の声が多く見受けられます。特にウーバーが2023年の商用化を目指すという具体的な計画を示したことで、「渋滞から解放される日が待ち遠しい」「都市の移動が劇的に変わる」といったポジティブな意見が目立ちました。その一方で、「安全性が一番心配」「騒音はどうなるのか」「落ちてきたらどうするんだ」など、規制や技術的な課題に対する懸念を示す声も少なくありません。多くの人がこの革新的なサービスにワクワクしつつも、安全性と法整備の確立こそが、社会実装への鍵であると考えているようです。
私見ではございますが、この「空飛ぶタクシー」は、単なる移動手段の進化というだけでなく、都市のあり方や人々の生活そのものを根底から変革するポテンシャルを秘めていると考えております。ウーバーは規制当局との交渉力を武器に、この分野で大きな一歩を踏み出しましたが、技術の進展を法制度が追いかける形になるのは必然です。この新しいフロンティアにおいて、安全性と利便性のバランスをいかに取っていくのか、そして日本がどのようにして世界に遅れをとらず、この「空の移動革命」に貢献していくのか、今後の動向から目が離せないでしょう。
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