2019年10月01日の消費税率10%引き上げまで、残りわずか2週間となりました。今回の増税において、政府は消費の落ち込みを防ぐための目玉施策として「キャッシュレス・ポイント還元事業」を掲げています。これは対象店舗でクレジットカードやスマホ決済を利用すると、最大5%の還元が受けられる仕組みです。政府は今回、過去の増税時のような特売セールの自粛を求めておらず、小売業界や外食産業ではかつてないほどの激しい価格競争が巻き起こる気配を見せています。
SNS上では「少しでも安く済ませたい」「キャッシュレスの還元は複雑で分かりにくい」といった戸惑いの声が上がる一方で、実質的な値下げを期待するユーザーの投稿も目立っています。企業側としては、消費マインドが冷え込む中で顧客が他店へ流れることを防ぎたいという切実な思いがあるのでしょう。しかし、人口減少が続くこれからの時代において、安易なセールに頼りすぎる経営スタイルは、いずれ自らの首を絞めることになりかねないという危惧も拭い去ることができません。
特に今回の価格競争の火種となっているのが、全国に5万店以上を展開するコンビニエンスストアの動向です。大手チェーンの多くは、増税に合わせて「その場で2%分を即時値引き」する方針を打ち出しました。一部の直営店を除き、酒類以外の食品であれば軽減税率と組み合わせることで、なんと増税前よりも支払額が安くなる計算になります。このコンビニの強気な姿勢は、周辺の競合他社にとって極めて大きな脅威として立ちはだかっているようです。
この動きに敏感に反応したのが外食チェーン各社です。通常、店内飲食は10%、持ち帰りは8%という「軽減税率」による税率の差が生じますが、日本マクドナルドや松屋フーズなどは、税込みの支払額を統一する決断を下しました。これは消費者の利便性を考慮した結果であると同時に、利便性の高いコンビニへの顧客流出を阻止するための対抗策と言えるでしょう。各社、利益を削ってでも「分かりやすさ」と「お得感」を維持しようと必死の攻防を繰り広げています。
スーパーの独自セールがもたらす「需要の先食い」という罠
今後の焦点は、私たちの生活に密着したスーパーマーケットの動きに移ります。大手スーパーの多くは資本金が一定規模以上であるため、中小店舗向けのキャッシュレス還元事業の対象外となるケースがほとんどです。そのため、セブン&アイ・ホールディングス傘下の店舗をはじめ、多くの企業が独自の割引キャンペーンで対抗しようとしています。消費者の節約志向が強まる中で、増税直後から各社一斉に「値下げ合戦」へ突入するシナリオが現実味を帯びてきました。
確かに、家計を預かる消費者にとって「お得感」は非常に魅力的であり、短期的には大きな集客効果が見込めるはずです。しかし、過度なセールは本来将来発生するはずだった「需要の先食い」に過ぎません。一度値下げに頼る体質に陥ってしまうと、そこから脱却することは容易ではないでしょう。私は、企業が安さだけを競うのではなく、商品の質や体験価値を高める「付加価値戦略」こそが、真の持続可能な成長へと繋がる鍵になると確信しています。
これからの成熟社会において、企業には目先の数字を追うだけでなく、価格競争を自制するような賢明な判断が求められています。安売りによる消耗戦ではなく、消費者が納得して対価を支払えるような新しい魅力をどう生み出すか。2019年10月01日という転換点を前に、私たちは安さの裏側にある持続可能性についても、一度立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。賢い消費者として、そして企業として、真の豊かさを追求する姿勢が今こそ試されています。
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