2019年6月7日時点、日本のコンビニエンスストア業界は、新規出店のペースがかつてないほどに減速している状況です。これは、コンビニが「飽和状態」に達した証拠だと見る向きもありますが、本当にそうなのでしょうか?
各社の計画を見ると、2019年度の純増店舗数は、セブン-イレブン・ジャパン(沖縄を除く)とファミリーマートが100店、ローソンに至ってはゼロと、異例の数字が並んでいます。さらに、中堅のミニストップは2018年度に連結営業赤字に転落し、160店の減少を見込んでいるのです。中堅クラスの企業をすべて合わせても純増数は1,000店に届かない見込みで、これはコンビニ草創期を除けば、過去に例を見ない低水準だと言えます。
📉出店鈍化の背景にある深刻な課題:人手不足と収益性悪化
なぜ、これまで出店競争を繰り広げてきたコンビニの店舗数が伸び悩んでいるのでしょうか。その背景には、いくつかの深刻な問題が絡み合っています。まず、ドラッグストアの猛烈な出店攻勢などによる既存店客数の減少が挙げられます。さらに、全国的に深刻化している人手不足からくる人件費の高騰、そして、大量の食品廃棄ロスの増加などが、店舗の利益を圧迫しているのです。これらの要因が重なり、フランチャイズチェーン(FC)加盟店の収益環境は厳しさを増しており、多くのオーナー様が苦境に立たされているのが現状でしょう。
こうした状況に対し、コンビニ大手各社は加盟店テコ入れ策として、大胆な既存店への投資を加速させています。店舗作業の省力化を進めるための什器(じゅうき)やレジなどの導入を前倒しするほか、食品廃棄ロスの削減に向けて、賞味期限を伸ばすなどの取り組みを急いでいます。総投資額に占める既存店への投資比率は、セブン-イレブンが約7割、ファミリーマートが8割、ローソンは大部分を占めるとされ、本部がいかに加盟店の維持・安定化に注力しているかが窺えますね。
また、加盟店の取り分を増やす施策も進められていますが、現段階でFCビジネスの根幹とも言えるロイヤルティー(本部への経営指導料)の引き下げに言及している企業は見当たりません。この背景には、オーナーの属性変化が大きく影響していると考えられます。初期のコンビニ経営者は脱サラ組や酒屋・米屋などの転業者による単独店経営が中心でしたが、近年は企業や個人による複数店経営の比率が急速に拡大しているのです。
💰複数店経営がコンビニを救う?経営の安定化と本部の効率化
複数店経営の利点は、競合激化などで不採算に陥った店舗があっても、他の店舗でリスクをカバーできる点にあります。このリスクヘッジ機能によって、店舗経営が比較的安定するというメリットが生まれます。本部側から見ても、複数の店舗をまとめて支援する方が効率が良く、全国の店舗数を維持しやすいという大きな利点があるため、複数店経営を強く推奨しているのです。事実、2月末時点でセブン-イレブンの複数店経営比率は5割を超え、ファミリーマートとローソンは約70%にまで達しており、今後もこの比率はさらに拡大していく方針でしょう。
このような厳しい事業環境と、各社の施策に関するニュースは、SNSでも大きな反響を呼んでいます。特に「人手不足」や「食品ロス」といったキーワードは、社会問題と直結しているため、「オーナーさんの苦労は大変そう」「本部の利益とオーナーの利益のバランスはどうあるべきか」といった、加盟店収益に関する懸念の声が多く見受けられます。一方で、「デジタルを絡めた新しい形のコンビニ」といった、ローソン竹増貞信社長のコメントには、「未来のコンビニに期待したい」「もっと新しいサービスを生み出してほしい」といったポジティブな意見も寄せられている状況です。
💡「飽和」は進化のチャンス!コンビニ最大の武器は「店舗の数」
足元では店舗数が増えない状況ですが、「コンビニの成長が止まった」と悲観的に捉えているトップは少ない、というのが私の意見です。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長は「成長の余地は十分にある」と力強く語り、ローソンの竹増社長は「リアルの店舗にどういった付加価値をつけていくのかが重要で、デジタルを絡めた新しい形のコンビニを創造できる」と、未来を見据えています。
過去を振り返ると、コンビニは何度か「飽和状態」に陥ったと言われましたが、その都度、駅ナカや病院など新しい立地を開拓し、金融などの新しいサービス(例: ATM、公共料金収納代行)を創造することで、成長を続けてきました。コンビニの最大の武器、それは全国津々浦々に張り巡らされた店舗の数です。これは、アマゾンなど無店舗販売のシェア拡大により顧客を奪われ、先行きに不透明感が漂っていた従来型の小売業にとって、リアル店舗という最大の優位性を再認識させるきっかけにもなっているのです。
米国では、店舗を持つ優位性を生かした事業開発に乗り出したウォルマートを筆頭に、リアル店舗を持つ小売業の復活の兆しが見えています。この流れは日本にも波及する可能性を秘めていますね。現に、各社とも中期的な目標店舗数を修正しておらず、ローソンの竹増社長が「ご縁があれば何処かと一緒になっていく」と述べているように、M&Aなども含めたさらなる成長戦略を模索していることでしょう。コンビニ業態は、店舗の数という圧倒的なインフラが、すべての課題を癒やす薬となる可能性を今も秘めているのではないでしょうか。
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