私たちの生活に欠かせないプラスチックや合成繊維。その出発点となる「ナフサ(粗製ガソリン)」の市場が、今まさに大きな転換期を迎えています。2019年11月26日のアジア市場において、ナフサのスポット価格は1トンあたり566ドル前後まで跳ね上がりました。これは直近の安値だった10月初旬と比較して約18%もの上昇であり、約半年ぶりの高値を記録しています。
SNS上では、この急激なコスト増に対し「プラスチック製品の値上げに繋がるのではないか」「ガソリン価格への影響が心配だ」といった、生活への直撃を懸念する声が広がっています。原油価格の変動以上にナフサが独歩高の様相を呈している現状は、化学メーカーのみならず、投資家や一般消費者にとっても見逃せない事態と言えるでしょう。
サウジアラビアの供給停滞と環境規制の影
価格高騰の背景には、世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアの供給不安が横たわっています。2019年9月に発生した同国の石油施設への攻撃に対し、政府は生産の完全回復を宣言しましたが、現場の実態は異なります。ナフサの供給は依然として戻っておらず、市場の需給バランスは崩れたままです。供給網の脆弱さが改めて浮き彫りになった格好です。
また、2020年1月から導入される国際海運の環境規制(IMO2020)も間接的な要因となっています。製油所が規制対応のために低硫黄の軽油生産を優先した結果、副産物であるナフサの生産効率が低下しているという指摘もあります。こうした構造的な変化は、短期的な需給バランス以上に市場へ深刻な影響を及ぼしていると考えられます。
割安だったLPGからの需要回帰と今後の展望
需要面では、代替原料であるLPG(液化石油ガス)との逆転現象が起きています。これまで石化メーカーは、ナフサよりも1トンあたり100ドル以上安かったプロパン(LPGの主成分)を優先して使用してきました。しかし、冬の暖房需要期に入ったことやサウジ産の供給減により、LPGの価格優位性が急速に失われています。
ナフサとLPGの価格差が80ドルから90ドル程度まで縮まったことで、多くの企業が原料をナフサへと切り替え始めました。さらに、ガソリンの調合成分としての需要も重なり、まさに「ナフサ争奪戦」の状態です。エネルギーの多様化が進む一方で、結局は基礎原料であるナフサの安定確保が、産業の心臓部を守る鍵になるのだと痛感させられます。
需給の強さを示す「原油価格とのスプレッド(価格差)」は、9月中旬までの10ドルから20ドル程度から、現在は60ドルから70ドルにまで拡大しました。原油以上にナフサの価値が高まっているこの状況は、しばらく継続する可能性が高いでしょう。原材料コストの増大が最終製品の価格に転嫁される前に、企業は供給源の多角化を急ぐべきではないでしょうか。
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