木製の棚に整然と並ぶ、洗練されたデザインのパッケージ。一見すると都心のセレクトショップのような光景ですが、実はここは秋田県横手市にあるスーパー「マルシメ」の売り場なのです。2019年11月19日現在、同社が運営する「スーパーモールラッキー」は、その圧倒的な個性で遠方の客をも引き寄せる注目のスポットとなっています。
この魅力的な空間を作り上げたのは、弱冠25歳で代表に就任した遠藤宗一郎社長です。ネット上では「秋田にこんなにオシャレな場所があるなんて」「地元の野菜が新鮮で驚く」といった驚きの声が広がっています。大手チェーンがひしめく中で、あえて「独自性」という険しい道を選んだ若きリーダーの挑戦は、今まさに大きな実を結ぼうとしているのです。
どん底から這い上がった若きリーダーの決断
遠藤社長が家業を継いだ2006年は、まさに激動の時代でした。コンビニ大手での店長経験を経て帰郷した彼を待っていたのは、近隣にオープンした巨大ショッピングセンターとの過酷な価格競争だったのです。当時のマルシメは、伝票が手書きで発注はファクスという、IT化が進んだ大手とは比較にならないほど非効率な体制に置かれていました。
利益が激減し、一時は「お先真っ暗」とまで感じた状況下で、遠藤社長は大胆なリストラを断行しました。店舗数を絞り込んで経営の立て直しを図る一方で、2012年には「ファーマーズマーケット」を開設します。これは、生産者が直接商品を納品する「産地直送」の仕組みをスーパー内に取り込んだもので、地域共生の新しい形を提示しました。
ここで活用されている「自動メールシステム」は、IT化の遅れを取り戻す画期的な施策です。売れ行きがリアルタイムで農家に通知されるため、常に鮮度の高い商品が店頭に補充されるサイクルが生まれました。こうした「スケールメリット(規模の経済)」に頼らない戦い方は、中小企業が生き残るための教科書とも言える素晴らしい戦略ではないでしょうか。
買い物難民を救う「おもてなし」と次なる挑戦
マルシメの魅力は商品だけにとどまりません。2011年から開始した「無料送迎バス」は、公共交通機関の維持が難しい地方において、買い物に行きたくても行けない「買い物弱者」を救う貴重な足となっています。現在は2台のマイクロバスが14路線を運行し、片道40分かかる地域までカバーする手厚いサービスを提供しているのです。
さらに2019年6月には、秋田市内に実験店舗「NEED THE PLACE」をオープンさせました。倉庫をリノベーションしたこの店舗は、食のトレンドに敏感な層をターゲットにしており、将来的な自社商品の開発も見据えた戦略拠点となっています。年商30億円という数字に甘んじることなく、次々と新しいステージへ挑戦する姿勢には、編集者としても強い期待を抱かずにはいられません。
地域に根ざしながら、感性を研ぎ澄ませて大手に立ち向かうマルシメ。彼らが目指すのは、単なる「モノ売り」ではなく、地域住民の生活を豊かにする「場所づくり」なのでしょう。横手から発信されるこの食の革命が、今後どのように進化していくのか非常に楽しみです。
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