ホンダ英国撤退の波紋。大手部品メーカー「テイ・エステック」も事業終了へ、自動車業界を襲う変革の足跡

イギリスの自動車産業を揺るがす大きな転換期が訪れています。ホンダ系のシート製造大手であるテイ・エステックは、2019年12月6日、英国事業からの撤退に向けた労使協議を開始したことを明らかにしました。この決定は、最大の取引先であるホンダが2021年をもって現地工場を閉鎖するという方針を受けたもので、サプライヤー各社も極めて厳しい選択を迫られている状況が浮き彫りになっています。

テイ・エステックは、ホンダの完成車拠点がある英南部スウィンドンに国内唯一の工場を構えています。2019年3月期には約15万台分のシートを生産していましたが、その供給先は100%ホンダでした。一社に依存する構造ゆえに、2019年2月に発表されたホンダの生産終了というニュースは、同社の存立基盤を揺るがす決定打となったといえるでしょう。SNS上でも「地元の雇用はどうなるのか」と不安視する声が相次いでいます。

ここで注目すべきは、自動車部品の中でも「シート」という製品の特殊性です。シートは完成車の中でも非常にサイズが大きく、中身が詰まっているため「荷姿がかさむ(体積が大きく、輸送コストが高い)」という特徴があります。そのため、遠方から運ぶよりも、自動車メーカーの工場のすぐそばに拠点を置き、組み立てラインの進行に合わせてジャストインタイムで納入するのが業界の鉄則です。

ホンダの撤退発表後、テイ・エステックは他の自動車メーカーへの販路拡大を模索し、生き残る道を懸命に探ってきたようです。しかし、前述した輸送コストの壁や、生産計画の連動性を考慮すると、特定の拠点を失った後に新たなパートナーを即座に見つけるのは至難の業でした。結果として「現在の事業規模を維持することは困難」という苦渋の判断に至ったのは、ビジネスの合理性から見ても避けられなかったのかもしれません。

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連鎖するサプライヤーの撤退とEU離脱の影

今回の事態は、一社の問題に留まりません。英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」を巡る不透明な情勢も、企業の決断を後押ししている側面があります。プレス部品を手掛けるユニプレスが2021年までの工場閉鎖を決め、ケーヒンも現地子会社の解散を発表するなど、ドミノ倒しのように撤退が続いています。長年、英国の雇用を支えてきた日系サプライチェーンが崩れていく様子には、寂しさを禁じ得ません。

現在進められている「労使協議」とは、会社側と従業員代表が今後の雇用や条件について話し合う重要なプロセスです。テイ・エステックは協議が終了次第、改めて詳細を発表するとしていますが、労働者の生活を守るための誠実な対話が期待されます。自動車業界が100年に一度の変革期にある今、こうした痛みを伴う再編は今後も続くでしょう。私たちは、この大きな時代のうねりを注視していく必要があります。

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