2019年11月20日現在、日本経済は「デフレではない」という状態までこぎ着けました。量的・質的金融緩和がスタートして約6年半、さらにマイナス金利が導入されて約4年が経過しています。景気のバロメーターである需給ギャップも改善しましたが、目標とする2%の物価上昇には届かず、出口の見えない超緩和策が続いています。
長引く超低金利政策は、私たちの生活を支える金融機関に深刻な歪みをもたらしています。特に「貸出利ざや」の縮小は顕著です。これは銀行が企業に貸し出す際の金利と、私たちが預ける預金金利の差を指し、銀行にとっては最も基本的な収益の源泉です。この利ざやが削られ続けることで、銀行の経営体力は確実に消耗していると言えるでしょう。
「利回り追求」という名の見えないリスク
収益が悪化した銀行は、少しでも高い利益を求めて、通常よりも高いリスクを取る「利回り追求」へと走ります。本来であれば慎重に行うべき融資審査を簡略化し、コストを削ってでも貸付を増やそうとするのです。2019年に入り、不動産投資向け融資の不祥事が相次いで発覚している背景には、こうした構造的な問題が潜んでいると考えられます。
SNS上では「最近、銀行の投資信託の勧誘が激しすぎる」「地方銀行が生き残れるのか不安」といった声が散見されます。預金者としても、自分の預けたお金がどのように運用されているのか、無視できない局面に来ています。事実、2018年度には地方銀行の約4割が本業で赤字を計上しており、経営の健全性に黄色信号が灯っています。
金融緩和が牙をむく「リバーサルレート」の脅威
ここで注目すべきは、プリンストン大学の教授らが提唱した「リバーサルレート」という概念です。これは「ある一定のラインを超えて金利を下げすぎると、かえって金融緩和の効果が逆転し、景気に悪影響を与える」という理論です。専門用語ですが、要するに「良かれと思って打った注射が、打ちすぎて毒になる」状態を指します。
緩和の初期段階では、銀行が保有する債券の価格が上がり、含み益(売却すれば得られる利益)が発生するため、銀行には余力がありました。しかし、2019年11月20日の現状では、その含み益も底を突きつつあります。利益が出ないまま自己資本が削られれば、銀行はリスクを恐れて融資を抑制せざるを得ず、経済の血液であるお金の流れが止まってしまうのです。
編集部の視点:金利だけで解決できない「需要」の壁
私は、現在の苦境は単なる金融政策の失敗ではなく、日本社会の構造的な課題を映し出していると感じます。人口減少が加速する地域ほど融資競争が激化し、無理なリスクテイクが行われているという事実は、非常に重いものです。金利をいじれば経済が回るというフェーズは、2019年の今、すでに終わりを迎えているのではないでしょうか。
結局のところ、企業が「お金を借りてでも投資したい」と思えるようなイノベーションや、将来への期待感を生み出すことこそが急務です。日銀の追加緩和に期待する声もありますが、銀行の体力が限界に近い中での深掘りは、自滅を招きかねません。これからは金融の枠組みを超えた、実体経済を活性化させる抜本的な策が求められるでしょう。
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