スポーツを始めたばかりの頃、誰もが「もっと上手に、楽しくプレーしたい」と願うものです。そんな初心者の切実な願いに応えるべく、大手スポーツメーカーのミズノが新たな一手を投じました。2019年12月12日現在、競技人口の拡大をビジネスチャンスと捉え、あえて入門者向けに特化した高機能な用具開発に力を注いでいます。
特に注目を集めているのが、卓球用ラバーの新作「ユニゾンプラス」です。これは卓球のラケット面に貼り付けるゴム製のシートのことで、打球の「回転」「速さ」「制御」という3つの要素を絶妙なバランスで両立させています。SNS上でも「安価なのに使いやすそう」「これから始める子供に最適」といった期待の声が続々と上がっている状況です。
価格面でも驚きの戦略が取られており、税別3500円という設定は、上級者モデルと比較して約半分という手頃さです。2012年のロンドン五輪以降、日本の卓球界は右肩上がりの成長を続け、2018年の「Tリーグ」開幕でその熱狂は頂点に達しました。しかし、2019年に入り市場の勢いにはやや落ち着きが見え始めています。
矢野経済研究所の調査によると、2019年の卓球市場規模は前年をわずかに下回る134億円程度にとどまる見通しです。こうした停滞感を打破するため、ミズノは基本技術を習得しようとする層へターゲットを絞りました。「初心者こそ、扱いやすい道具を使うべき」というメッセージを打ち出すことで、再び市場を活性化させる構えです。
五輪イヤーを前に加速する「生涯スポーツ」へのアプローチ
ミズノの挑戦は卓球だけにとどまりません。2020年1月には、水泳の分野でも画期的な水着をリリースする予定です。これは「生涯スポーツ」として長く水泳を楽しみたい方のために、水の抵抗を極限まで抑える特殊素材を採用しています。体力に自信がない方でも、道具の力で楽に泳げる喜びを実感できる工夫が施されています。
ここで興味深いのは、ミズノやヨネックスといった国内の大手企業が、オリンピックの公式スポンサーという枠組みを超えた独自の戦い方を選んでいる点です。大会後の「五輪ロス」を防ぐためには、華やかなスター選手の活躍を見て競技を始めた人々が、その楽しさを継続できる環境を整えることが何よりも重要といえます。
編集者としての私の視点ですが、この「初心者を甘やかす戦略」は極めて合理的だと感じます。多くの人が競技を辞める理由は、上達の実感が持てず「疲れるだけ」と感じてしまうからです。テクノロジーを贅沢に注ぎ込んだ入門者モデルの充実は、スポーツ文化の裾野を広げ、業界全体の寿命を延ばす鍵になるでしょう。
一流の道具がプロだけのものであった時代は終わりを告げようとしています。2019年12月現在、高機能な用具は初心者が挫折を乗り越え、スポーツを一生の趣味にするための「魔法の杖」へと進化を遂げました。これからのスポーツシーンでは、道具の性能が個人の可能性をより一層引き出してくれるに違いありません。
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