オーストラリアの「食」が中国に買収される!?粉ミルク爆買いの裏にある食品安全神話と地元住民が抱くリアルな警戒感

オーストラリアやニュージーランドの豊かな自然が育む「食」の安全性が、今、中国の巨大資本によって次々と買い求められています。2019年には中国の乳製品大手である蒙牛乳業が、オーストラリアの有名なオーガニック粉ミルク企業などを相次いで買収する動きを見せました。こうした動きの背景には、両国と中国との間で結ばれた自由貿易協定、いわゆる関税を下げて貿易を活発にするFTA(自由貿易協定)の存在があり、良質な農産物の取引量が急増していることが挙げられます。

インターネット上のSNSなどでは、地元の愛着あるブランドが海外資本に変わることへの戸惑いや、自国の貴重な資源が流出してしまうのではないかといった懸念の声が数多く上がっています。実際に現地シドニーの一般市民からは、自国の食品を信頼できなくなった中国の消費者が今度は企業そのものを手に入れようとしているのではないか、といった不満や落胆の意見も聞かれました。買収されたブランドは元々現地でも非常に人気が高かっただけに、ショックを受ける消費者は少なくないようです。

中国の企業がここまで貪欲に海外の食品企業を欲しがる最大の理由は、自国の食品に対する根強い不信感にあります。かつて2008年に中国国内で発生した、有害物質が粉ミルクに混入して乳幼児が命を落とした極めて痛ましい事件は、今も人々の記憶に深く刻み込まれています。どれほど時間が経過しても安全管理への不安は拭いきれず、我が子の健康を守りたい親たちは、広大な草原と美しい空気に恵まれたオーストラリアやニュージーランドの環境に絶大な信頼を寄せているのです。

一方で、買収される側のオーストラリアやニュージーランドの企業にとっては、限られた国内市場の小ささが課題となっています。両国を合わせても人口は約3000万人にとどまり、家族経営の小規模な牧場や農場が多いため、世界的な競争を勝ち抜くための規模の拡大が難しいという現実があります。そのため、豊富な資金力を持つ中国企業からの買収提案は、経営を持続させるための魅力的な選択肢として映る側面もあり、売り手が出やすい環境が整っています。

しかし、こうした買収攻勢に対して現地の政治家や住民からは、国の基盤である製造業や経済の主導権が海外の意向に左右されかねないという強い警戒感が示されています。とりわけ猛烈な反対が起きているのが、領土そのものの取得につながる大規模な牧場や農地の買収計画です。過去には韓国の国土面積に匹敵するほどの広大な牧場の買収が試みられましたが、政府が国益に反するとして売却を阻止した事例もあり、安全保障の観点からも緊張が高まっています。

経済的な視点に立てば、中国はオーストラリアの輸出の3割、ニュージーランドの2割を占める最大の顧客であり、完全にビジネスを切り離すことは不可能です。だからこそ、中国企業は単に政府の許可を得るだけでなく、地域の雇用を守り、地元住民と誠実に対話を重ねる姿勢が不可欠だと私は考えます。信頼とはお金で買い取るものではなく、地域社会と共に育むものだからです。互いの文化と主権を尊重し合う姿勢がなければ、真の共存共栄は成し得ないでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました