アメリカが誇る航空宇宙大手のボーイング社で、組織の命運を握る大きな人事変革が行われました。2020年01月13日、同社の新たな最高経営責任者(CEO)として、外部出身のデビッド・カルホーン氏が正式に就任したのです。相次ぐ不祥事によって失墜した信頼をどのように取り戻すのか、世界中から厳しい視線が注がれています。就任初日、カルホーン氏は全従業員へ向けたメッセージの中で、自社が極めて危機的な状況にあることを率直に認めました。その上で、安全性と品質への責任を徹底する決意を表明しています。
しかし、新体制の船出はまさに暗雲が垂れこめる緊迫した状況となりました。就任直前となる2020年01月09日、驚くべき社内メールの存在が明らかになったためです。2度の凄惨な墜落事故を起こした小型旅客機「737MAX」の開発に関わっていた従業員たちが、監督官庁である米連邦航空局(FAA)を「猿」と揶揄するような不適切なやり取りを行っていました。この衝撃的なニュースは、SNS上でも「人の命を預かる企業としてのモラルが完全に崩壊している」「恐ろしすぎてボーイングの飛行機には乗れない」と大炎上しています。
メディアや専門家からも、社内に安全や規制を軽視する歪んだ雰囲気が蔓延していた動かぬ証拠であると、厳しい批判が相次ぎました。さらに、悲劇が起きたインドネシアのライオン航空が、機体導入時にシミュレーターを使った操縦士訓練を求めていたにもかかわらず、ボーイング側が社内で同航空を侮辱していた事実も発覚しています。2017年の時点で交わされた「大ばか」などという文面からは、顧客や安全を軽んじる傲慢な体質が透けて見え、米議会からも企業風土そのものを根本から変革すべきだという声が上がりました。
GE出身カルホーン新CEOの双肩にかかる巨人の再生と供給網の救済
かつて2019年中の運航再開を掲げていたミューレンバーグ前CEOは、見通しの甘さとFAAとの関係悪化の責任を問われ、2019年末に事実上更迭されています。その後を継いだカルホーン氏は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の要職を歴任し、2009年からはボーイングの取締役も務めてきた人物です。高いバランス感覚を持ち、FAAとのパイプも太いと期待されていますが、彼が直面する課題はあまりにも山積みと言わざるを得ません。現場の意識改革に加え、傷ついたサプライチェーンの修復も急務となっています。
サプライチェーンとは、製品の原材料調達から製造、流通を経て消費者に届くまでの一連の供給ネットワークのことです。航空機のような超精密機械では、この結びつきが途切れると大打撃となります。実際に2020年01月10日には、主要部品メーカーが2800人もの一時解雇を発表するなど、影響は深刻化する一方です。個人的な見解として、ボーイングの復活には、単なるトップの交代劇ではなく、利益第一主義から「安全第一」へと全社的な価値観を180度転換する猛省と、うみを出し切る徹底的な企業体質の改革が不可欠でしょう。
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