働く側にとっては嬉しいはずの最低賃金の引き上げが、地域の経済を支える企業にとっては大きな試練となっているようです。愛媛県内の事業所を対象に実施された最新の意識調査において、なんと約7割もの企業が「経営に影響が出ている」と回答しました。このリアルな数字は、地方ビジネスが直面している厳しい現実を如実に物語っています。ネット上でも「中小企業には死活問題」「人手不足の中でどう生き残ればいいのか」といった悲痛な声が次々と上がっており、SNSを中心に大きな議論を巻き起こしているのです。
いよぎん地域経済研究センターが2019年9月に実施した調査によると、298社から得られた回答の中で最も深刻だったのが「人件費の増加に伴う採算性の悪化」でした。実に48.5%の企業が、利益の減少に頭を悩ませています。さらに、44.1%の企業が「求人募集賃金の上昇」を挙げており、新たな人材を確保するためのコストも跳ね上がっている状態です。このように経営や人事への直接的なダメージがドミノ倒しのように広がっている現状は、決して見過ごすことができない局面を迎えていると言えるでしょう。
今回の問題は、自社の人件費だけに留まらない複雑さを持っています。調査では「外注先や仕入れ先からの値上げ要請」を挙げた企業が20.9%に達しました。これは、取引先が人件費の増加分を価格に上乗せせざるを得なくなったためです。専門用語で言えば「コストプッシュ型インフレ(原材料や人件費の高騰が原因で物価が上がること)」に近い現象が、愛媛の企業間で連鎖していることを意味します。この負のループを断ち切るための、抜本的な生産性の向上が急務となるでしょう。
また、労働現場ではもう一つの奇妙な現象が起きています。20.5%の企業が「パート従業員らの勤務日数や労働時間の抑制」を経験していると答えました。これは、いわゆる「年収の壁」と呼ばれる所得制限が原因です。一定の収入を超えると扶養から外れたり税金が増えたりするため、時給が上がった分だけ働く時間を短くするという調整が働いています。せっかく賃金を引き上げても労働力が減少してしまうという、皮肉なミスマッチが起きているのが現状です。
編集部としては、国が一律に進める賃金引き上げ政策に対し、地方の実情に合わせた「グラデーションのある支援」が必要だと考えます。大企業のような体力がない地方の中小企業に一律の負担を強いるだけでは、地域の雇用そのものが失われかねません。企業が無理なく賃金を上げられるよう、業務のデジタル化(DX)への補助や、価格転嫁をスムーズに行えるような取引環境の整備を、行政が主導して強力にバックアップしていくことこそが、本当の意味での地域活性化につながるのではないでしょうか。
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