人材派遣の市場が、いまだかつてない大きな転換期を迎えています。2020年4月1日からの「同一労働同一賃金」の導入を前に、派遣会社がクライアント企業に請求する派遣料金の上昇が止まりません。主要な職種を中心に全体的な水準が底上げされており、企業の採用活動やコスト管理にも大きな影響を与えそうです。
同一労働同一賃金とは、同じ会社の中で同じ仕事をしているのであれば、正社員や派遣社員といった雇用形態に関わらず、同等の給与や福利厚生を支給すべきという法律上の大原則です。この制度改革に対応するため、派遣会社はスタッフの待遇改善を急いでおり、それが料金プランの改定という形で表面化しています。
特に需要が集中している一般事務職では、この1年間で派遣料金の平均が5%から6%程度も高くなりました。SNS上でも「派遣の時給が上がって嬉しい」「企業のコスト負担が心配」といった、働き手と経営陣の双方から様々な反響が寄せられています。人手不足を背景に、優秀な人材をつなぎ止めるためには時給アップが不可欠な状況です。
派遣先企業が支払う料金のうち、一般的には約7割がスタッフへの直接の給与に充てられます。最もニーズの高い一般事務職の料金相場は、2019年秋の時点で1時間あたり2300円から2600円に達しました。2018年秋の段階では2100円から2500円でしたから、その上昇ぶりは誰の目にも明らかでしょう。
昨今の働き方改革による正社員の残業抑制も、このトレンドに拍車をかけています。社内だけでは処理しきれなくなった業務を補うため、多くの企業が外部の即戦力として派遣社員の活用を広げているのです。民間大手の調査によると、2019年11月における関東エリアの一般事務の募集時平均時給は1604円を記録しました。
この金額は前年の同じ月と比べて1.1%のプラスであり、過去最高の水準を更新し続けています。私は、この流れは単なるコスト増ではなく、日本の労働市場が健全に評価されるための前向きな変化だと捉えています。これまでの非正規雇用という枠組みが見直され、個人のスキルに見合った正当な対価が支払われるべきです。
製造業では明暗も!職種ごとに異なる求人需要の最前線
一方で、人材不足がとりわけ深刻な医療や介護の現場では、料金が2100円から2600円へと推移しました。これまで比較的安価だった最低ラインの料金が300円ほど底上げされており、現場の負担は増しています。しかし、命を預かる専門的な仕事だからこそ、待遇改善によって働く人々が報われる社会にすべきでしょう。
対照的な動きを見せているのが、工場の製造ラインなどに向けた派遣分野です。現在の料金は1800円から2300円となっており、2018年の1600円から2200円という水準に比べれば、1年間のトータルでは上昇したように見えます。ですが、足元では世界経済の減速という荒波が影を落とし始めました。
具体的には、アメリカと中国の貿易摩擦が長期化している影響で、自動車や半導体といった大手メーカーが慎重な姿勢に転じています。求人を控える動きが強まっており、2019年11月の全国の製造系求人件数は、前年の同じ時期に比べて20.8%も減少しました。今後の景気動向には十分な注意が必要と言えます。
今回の法改正は、単に時給が上がるという話に留まらず、社会全体の働き方を見直す試金石になるはずです。企業はコスト上昇に苦慮するかもしれませんが、スタッフへの投資を惜しまない姿勢こそが、最終的には優れた成果や組織の成長を生み出します。これからの劇的な変化から目が離せません。
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