個人投資家の皆様にとって、見逃せない大波が押し寄せています。インターネット証券各社が顧客を惹きつけるために、取引にかかるコストを限界まで引き下げる「手数料ゼロ」の激しい競争を繰り広げているのです。これまで投資のハードルとなっていた購入手数料や売買手数料が無料になる動きは、私たちの資産形成において大きな追い風になるでしょう。
その勢いはSNS上でも瞬く間に話題となり、「念願の個別株に挑戦するチャンスが来た」「元手が少なくても分散投資がしやすくなって嬉しい」といった歓喜の声が多数上がっています。一方で、一部のコストが無料になる裏で別の費用が引き上げられた事例もあり、「目先の無料に惑わされず、トータルの費用を見極める必要がある」と冷静に分析する賢明なユーザーの意見も目立っているようです。
投資信託の分野では、SBI証券、楽天証券、松井証券、auカブコム証券、マネックス証券の大手5社において、すべての購入手数料が無料化されました。2019年11月11日にフィデリティ証券がネット経由の投信販売を完全無料化すると発表したことを皮切りに、大手各社が一斉に追随した形です。これにより、従来は購入金額の数パーセントもの初期費用がかかっていた、レバレッジをかけて大きな利益を狙う「ブルベア型」と呼ばれるハイリスク・ハイリターンな投資信託も、手軽に購入できるようになりました。
さらに、投資信託を管理・運用してもらうための経費であり、保有期間中に毎日差し引かれる「信託報酬」の引き下げ競争も加速しています。2019年09月26日にSBIアセットマネジメントが米国の著名な運用会社と組んで設定した米国株投資信託は、信託報酬が税込で年0.0938%となり、国内で初めて0.1%を切る驚異的な低水準を記録しました。この圧倒的なコストパフォーマンスが支持され、わずか3カ月半で運用資産の総額が100億円を突破する異例のヒットとなっています。
証券取引所に上場していて株式と同じようにリアルタイムで売買できる「上場投資信託(ETF)」でも、2020年01月08日に三菱UFJ国際投信が年0.0858%という世界最低水準の信託報酬を誇るグローバル株ETFを設定しました。国内外のETFを購入する際の手数料を無料にする動きも広がっており、主要なネット証券では「S&P500」などの人気な米国ETFや、数多くの国内ETFが手数料ゼロで取引できるようになっています。
一般的な現物株の取引においても、松井証券、楽天証券、SBI証券の3社が、1日あたりの売買代金のうち手数料が無料となる上限枠を従来の10万円から50万円へと大幅に引き上げました。これにより、日本国内の上場企業のうち約9割以上の銘柄が、最初の最低投資単位であれば手数料を気にせずに購入できるようになります。東京都内に住む投資歴3年の26歳の男性も「個別株への投資にトライしやすくなる」と、この劇的な変化を好意的に受け止めています。
それどころか、SBI証券とauカブコム証券の2社は、将来的には売買代金の多寡にかかわらず、現物株の取引手数料を完全にゼロにする方針まで打ち出しました。すでにSBI証券は私設取引システム(PTS)を利用した夜間取引の手数料を撤廃し、auカブコム証券も通常の1単元に満たない少額から株を買い増せる「プレミアム積立プチ株」の手数料を無料にするなど、未来を見据えた布石を打っています。
こうした手数料に頼らないビジネスへの転換として、各社は新たな収益源を模索し始めています。例えば、auカブコム証券はKDDIグループとの連携による広告などのデータビジネスを展開し、SBI証券は新規株式公開(IPO)の主幹事を務めるなどの法人向けビジネスを強化する方針です。また、楽天証券は特定の金融機関に属さない独立系金融アドバイザー(IFA)との協業を進め、顧客の預かり資産そのものを増やす戦略に注力しています。
この無料化の波は、証券会社からお金や株式を借りて元手以上の取引を行う「信用取引」の領域にも波及しました。auカブコム証券が2019年12月16日に株式やETFなどの全商品の信用取引手数料を無料にしたほか、他社も特定の投資対象や1日限定の手数料を無料にする対抗策を打ち出しています。ただし、ここで注意したいのは、手数料がゼロになった一方で、資金を借りる際の手数料である「融資金利」や、株を借りるための「貸株料」が引き上げられたケースもあるという点です。
ネット証券は実店舗を持つ対面型の証券会社に比べて店舗維持費などの固定費を大幅に抑えられるため、薄利多売のビジネスモデルが成立しやすいという強みがあります。私は、この手数料ゼロ化の流れは個人投資家の裾野を広げる素晴らしい過渡期であると考えます。しかし、だからこそ私たち投資家は、単に「手数料無料」という言葉だけに飛びつくのではなく、投資商品のラインナップや注文システムの安定性、提供される情報の質などを総合的に比較し、自分の投資スタイルに最も合致したパートナーを選ぶ姿勢が求められているのではないでしょうか。
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