いま、関西のクラフトビールシーンがかつてないほどの熱気に包まれています。各地で小規模な醸造所が次々と誕生しており、個性豊かな銘柄が愛好家を魅了しているのです。SNS上でも「地元に新しいブルワリー(ビール醸造所)ができた」「独特の味わいがクセになる」といった歓喜の声が溢れています。単なる一過性の流行にとどまらず、多様なカルチャーと結びつきながら、独自の進化を遂げている様子がひしひしと伝わってきます。
1990年代に巻き起こった地ビールブームは、残念ながら長続きしませんでした。しかし現在の盛り上がりは、当時とは明らかに一線を画しています。生き残った実力派の老舗が土台を支えつつ、海外からやってきた熱意ある職人や、全く異なる業界からのチャレンジャーが続々と参入しているからです。お互いが刺激し合うことで製品の幅が格段に広がり、私たちは今までにない奥深い味わいに出会えるようになりました。
関西のクラフトビールを語る上で外せない存在が、1997年7月1日から販売を続けている大阪府箕面市の「箕面ビール」でしょう。世界的なコンテストで何度も賞を獲得している同社は、アメリカや台湾といった海外の名門メーカーと共同で新しい商品を開発する試みにも積極的です。地域に根ざしながらも、その視線は常に世界へと向けられており、関西全体のブランド力を引き上げる牽引役として素晴らしい活躍を見せています。
もう一つの強みとして、日本酒の生産地として有名な関西ならではの「良質な水」が挙げられます。この恵まれた環境を活かし、京都市の「黄桜」といった老舗の酒蔵がビール造りに本腰を入れているのも面白い特徴です。ビール酵母(糖分をアルコールと炭酸ガスに変える微生物)を巧みにコントロールする伝統の技が、驚くほど洗練された喉越しを生み出しており、歴史ある技術の底力には目を見張るものがあります。
さらに、日本に移住した外国人の感性が吹き込まれることで、イノベーションが加速しています。和歌山県有田川町で活動する「ノムクラフト・ブリューイング」では、アメリカ出身のベン・エムリック氏らを中心に、全国100店舗以上の飲食店へ独自のビールを届けています。現地を流れる水の成分が、ビールの聖地として名高い米オレゴン州ポートランドの水質と驚くほど似ているという発見は、実にロマンを感じるエピソードでしょう。
驚くべきことに、大阪市のバルブ製造メーカーである「一ノ瀬」のように、ものづくりのノウハウを武器に異業種から飛び込む事例も増えています。異色とも思える挑戦ですが、品質管理へのこだわりが活きる分野だけに、今後の展開が非常に楽しみです。私はこうした多様なプレイヤーの参入こそが、これまでの閉塞感を打破し、業界全体のクオリティを底上げする最大の原動力になると確信しています。
一方で、市場が活気づくほど競争が激しくなるのは避けられません。国税庁のデータによると、2017年度時点で全国の製造業者は176者に達しており、関西の醸造所も50カ所に迫る勢いです。買い手にとっては選択肢が増えて嬉しい限りですが、造り手にとってはまさに正念場と言えます。この素晴らしいカルチャーを日本の文化として定着させるためにも、各メーカーが個性を磨き、切磋琢磨し続けることが今まさに求められているでしょう。
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