2019年に日本中を沸かせたラグビーワールドカップは、飲食業界にも巨大な旋風を巻き起こしました。英国風パブを展開する「HUB」では、大会が開催された2019年9月と2019年10月の既存店売上高が、前年の同じ月と比べて20%以上も増加するという驚異的な数字を記録しています。スタジアムさながらの熱狂に包まれた店内の雰囲気は、まさに本場イギリスそのものでした。訪日外国人客が日本のパブ文化に触れる絶好の機会となり、SNS上でも「HUBの盛り上がりが異次元で楽しすぎる」といった歓喜の声が溢れています。
しかし、華やかな話題の裏では、2019年10月に実施された消費増税の影が確実に忍び寄っています。太田剛社長は、世間の見立てよりも消費マインドの冷え込みをシビアに捉えており、とりわけ2次会利用の減少を実感しているそうです。さらに近年は、毎年のように日本を襲う台風や豪雨などの異常気象も無視できません。同社ではこれらの一時的な悪天候を特殊な要因として片付けるのではなく、今後の経営計画に最初から織り込んでいくという、時代の変化に応じた堅実な姿勢を打ち出しています。
従業員の笑顔を守る元日休業と2020年最大の試練
時代の変化といえば、労働環境を改善するための国の方針である働き方改革への対応も急務となっています。HUBでは2020年の元日、書き入れ時であるカウントダウン営業の誘惑を振り切り、わずか3店舗を除いたほぼ全店で休業を断行しました。社内からは反対意見も噴出しましたが、太田社長は従業員の心身の健康に配慮する道を選んだのです。この決断には、SNS上でも「働く人を大切にする企業は応援したくなる」と、多くの現代人から好意的な意見が寄せられ、ブランドのイメージアップに繋がっています。
一方で、2020年4月からスタートする改正健康増進法による飲食店の原則屋内禁煙化は、同社にとって今年最大の試練と言えるでしょう。この法律は受動喫煙を防ぐための規制ですが、先行して禁煙化した店舗から喫煙可能な他店へ顧客が流出する現象が既に起きています。太田社長は、この客数減少の影響が2020年中は続くと冷静に分析しています。ですが、この荒波を乗り越えた先には、タバコの煙を避けていた新しい客層が足を運んでくれるという、クリーンな環境ならではの明るい見通しも示されています。
東京五輪がもたらす光と新業態への確かな手応え
そんな激動の2020年において、最大の希望となるのが目前に迫った東京オリンピックです。ラグビーでの成功体験を踏まえ、太田社長はインバウンドのさらなる大進撃に強い期待を寄せています。大会期間中の物流の混乱に対しても、冷凍や常温で長期保管ができる食材が多いパブの強みを活かし、まとめ搬入で乗り切る構えです。これまでは欧米系が中心だった客層に加え、アジア圏からの観光客も視野に入れたメニュー開発を進めており、世界中の人々がHUBで乾杯する日も遠くありません。
さらに、ウイスキーを炭酸水で割ったハイボールの人気を追い風に、2019年に始動した新業態「HUB+82」も絶好調です。東京の池袋と渋谷に誕生した店舗は、こだわりのウイスキーを愛するファンの心を早くも掴んでいます。企業として常に新しい挑戦を続けながら、足元を固めていくHUBの姿勢からは、日本の夜をより豊かにしたいという強い情熱が伝わってきます。法改正やトレンドの荒波を乗りこなす同社の鮮やかな手腕に、今後も多くのビジネスパーソンから熱い視線が注がれることでしょう。
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