【大平貴之】常識を打ち破るアマチュア精神!世界が驚愕したプラネタリウム「メガスター」誕生の奇跡

出発点は、わずか7つの星でした。星空を創り出すことに心を奪われた少年は、やがて100万個以上の星を投影する怪物を独力で完成させることになります。プラネタリウム・クリエーターである大平貴之さんの妥協のないアマチュア精神が、本物をも凌駕する美しい夜空を生み出したのです。

「これは私の趣味です」。1996年夏、大阪で開催された国際プラネタリウム協会の大会で、大平さんがプレゼンテーションの最後に放ったこの言葉は、会場を大きな笑いと感動で包みました。当時、専門メーカーの高級機でも投影できる星の数は多くて3万個ほどだった時代です。それを26歳の大卒間もない青年が、4万5000個もの星を映し出す自作機を引っ提げて現れたのですから、世界中のプロが驚愕したのも無理はありません。

この快挙にSNS上でも、「個人の情熱が企業の技術力を超える瞬間ほどワクワクするものはない」「『趣味』と言い切る格好良さに痺れる」といった称賛の声が相次いでいます。大学を1年休学してまで情熱を注いだ作品が世界に認められた瞬間でしたが、彼の視線はすでに、さらなる高みである「100万個の壁」へと向いていました。

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常識を覆した「メガスター」の誕生と家庭への普及

こうして産声を上げたのが、150万個の星を映し出す「MEGASTAR(メガスター)」です。この装置はプラネタリウムの歴史を根本から塗り替えました。特筆すべきは、わずか35キログラムという驚異的な軽さです。どこへでも持ち運べる手軽さにより、美術館やイベント会場など、あらゆる場所で満天の星空を提供することが可能になりました。

この「どこでも星空を楽しめる」というコンセプトは、玩具メーカーのセガトイズと共同開発した家庭用投影機「ホームスター」へと受け継がれます。ギネス級の技術を家庭で気軽に楽しめるこの商品は、世界中で130万台を販売する大ヒットを記録しました。

幼少期から本物志向だった大平さんは、小学生の頃に夜光塗料で自室の壁にオリオン座を描いたことから、その果てなき旅を始めました。高校時代にオーストラリアで見た本物の天の川に衝撃を受け、当時のプラネタリウム界にあった「肉眼で見える9000個の星が映れば十分」という固定観念に疑問を抱きます。よりかすかな光を放つ星々を投影してこそ、宇宙の奥行きが表現できると確信したのです。

宇宙飛行士・毛利衛氏との出会いと「星の数」からの脱却

その後、ソニー勤務を経て独立した大平さんに、大きな転機が訪れます。それは日本科学未来館の館長であり、宇宙飛行士の毛利衛さんとの出会いでした。毛利さんは大平さんの投影機を見て「宇宙の星空そのものだが、輝きがまだ本物と違う。もっと進んだものを一緒に作ろう」と提案したのです。

2004年、同館に設置された560万個の星を誇る「メガスターⅡ―コスモス」は、世界最先端のプラネタリウムとしてギネス世界記録に認定されました。しかし、ライバルメーカーも黙ってはいません。2007年には他社が1000万個の投影機を発表し、記録は塗り替えられてしまいます。

焦る大平さんに、毛利さんは「星の数を競うだけでよいのか」と厳しい言葉を投げかけました。ここで大平さんは、ただ数を増やすだけではない「フュージョン(融合)」という新技術へと舵を切ります。

フュージョンとは、光学式の美しい星と、天候や風景を自由に描けるCG(コンピューターグラフィックス)を高度に融合させるデジタル技術のことです。あえて光学式で映す星を明るいものだけに絞り、無数の暗い星をCGで制御することで、ヤシの木に隠れる星の明滅や、トンネルを抜けた先の景色など、劇的な表現が可能になりました。

イノベーションを巻き起こす「アマチュア精神」の強さ

なぜ、巨大企業ではなく個人がこれほどの革新を起こせたのでしょうか。大平さんは「プロは顧客の満足を求め、アマは自分の満足を追い求める。だからこそ、尖った原石のまま世に出せた」と語ります。前例を重視する公共施設と、それに合わせるメーカーの縮図を、圧倒的な情熱が打ち破ったのです。

ネット上では「組織のバイアスに囚われない物作りの本質がここにある」「クリエイターとして最も大切な姿勢を学んだ」と、彼の哲学に共感するビジネスパーソンが後を絶ちません。

現在の日本において、こうした「大人の本気の趣味」が既存の市場を活性化させるケースは非常に貴重です。ビジネスの成功だけを目的とせず、純粋な好奇心から生まれた技術だからこそ、人々の心を激しく揺さぶるのでしょう。

現在、メガスターは国内外の多くの施設に導入され、2019年には巨大なドーム球場の天井に星空を映し出す挑戦も成功させています。趣味から始まった大平さんの終わらない挑戦は、これからも私たちにまだ見ぬ宇宙の美しさを教えてくれるに違いありません。

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