【2020年春闘】経団連フォーラムから紐解く働き方改革第2章!日本企業が生き残るための「付加価値」と「エンゲージメント」の教科書

2020年の春季労使交渉、いわゆる「春闘」が本格的に幕を開けました。日本人の働き方が歴史的な転換期を迎える中、これまでの年功序列制度や一律のベースアップは今後どうなっていくのでしょうか。2020年1月28日と2020年1月31日の2日間にわたり、東京都内で「経団連労使フォーラム」が開催されました。労使のトップたちが一堂に会したこのイベントでは、これからの時代を生き抜くための熱い議論が交わされ、SNSでも「日本型雇用の終わりが始まった」「これからは成果主義が加速する」と大きな反響を呼んでいます。

フォーラムでは「生産性向上を実現する人材戦略」というテーマのもと、経団連の大橋徹二副会長と遠藤信博審議員会副議長が登壇しました。進行役を務めたのは学習院大学の守島基博副学長です。守島氏は、これまでの働き方改革が「残業削減」や「有給休暇の取得推奨」といった、働く時間の短縮ばかりに注力してきたのではないかと指摘します。しかし、現在深刻な人手不足に直面する日本企業にとって、本当の解決策はそこにはありません。労働時間を減らすだけでなく、業務の効率や成果を劇的に高める「生産性の向上」こそが急務なのです。

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インプット削減から「エンゲージメント」を高めるフェーズへ

経団連の経営労働政策特別委員会で委員長も務める大橋氏は、生産性には「労働投入(インプット)」と「付加価値(アウトプット)」の両面があると語ります。これまでの働き方改革を「フェーズI」とするならば、それは時間外労働の削減といった効率化が主軸でした。しかし、これからは「フェーズII」へ進むべきだと大橋氏は主張します。ここで鍵となるのが、従業員の「エンゲージメント」です。これは、社員が会社の目標に共感し、自発的に貢献したいと感じる深い絆や熱意のことを指す専門用語です。

社員がこれまで以上に「働きがい」や「やりがい」を持って仕事に打ち込める環境を整えること。これこそが、企業がより高レベルなサービスや商品を生み出す源泉になるのです。私が考えるに、単に「早く帰る文化」を作るだけでは、企業の成長は止まってしまいます。働く本人が主役となり、モチベーションを高く保てる職場こそが、これからの日本の強みになるべきでしょう。大橋氏が率いるコマツでは、春の交渉時期に限らず、1年を通じて労使でこの生産性向上への取り組みを継続しているとのことです。

日本の労働生産性はOECDで21位?問われる付加価値の対価

一方で、遠藤氏は日本の厳しい現状をデータを交えて解説しました。日本生産性本部の調査によると、日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で21位と低迷しています。これに対して遠藤氏が社長を務めるNECでは、コアタイムのない「スーパーフレックス制」やテレワークの普及に尽力してきました。かつてはテレワークに抵抗があったという遠藤氏も、台風などの災害時にその圧倒的な利便性と効果を実感したそうです。ICT(情報通信技術)を駆使した柔軟な働き方は、いまや不可欠な戦略といえます。

さらに議論は、日本の誇る「高品質」が適切に評価されていないという問題へと発展しました。大橋氏は、企業がコストの何倍の価格で売れているかを示す「マークアップ率」が、日本は諸外国に比べて低い点を問題視します。例えば、時間通りに正確に届く日本の宅配便は素晴らしいサービスです。しかし、激しいシェア争いの結果、価格競争に陥っています。生み出した優れたサービスに対し、正当な価格を設定して「適正な対価」を受け取れるかどうかが、日本企業の命運を分けるでしょう。

ジョブ型雇用の拡大と「格差是正」の狭間で揺れる労使の未来

遠藤氏も製造業の視点からこの意見に強く同意します。日本の製品は世界中で高く評価されていますが、その卓越したノウハウや知見が価格に反映されていません。これからは、単に均一で良いものを作る時代から、顧客が本当に求める価値を意識して創造する時代へと変わっていくのです。経営環境が激変する今、経団連は2020年1月21日に公表した報告書の中で、従来の終身雇用を前提とした日本型雇用を見直し、職務内容を明確にして成果を評価する「ジョブ型雇用」への転換を強く訴えています。

この動きに対し、SNS上では「スキルが正当に評価されるのは嬉しい」という歓迎の声がある一方で、組合側からは「雇用の安定が揺らぎ、格差が広がるのではないか」という強い懸念も上がっています。そのため労働組合側は、企業内最低賃金の引き上げによる格差是正を主張しています。私は、ジョブ型雇用への移行自体は国際競争力を高めるために不可欠だと確信します。ただし、それと同時に、働く人々が不当に困窮しないためのセーフティネットと公平な評価基準をセットで構築することこそが、経営側に課された最大の責務であると考えます。

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