2020年は記録的な暖冬に見舞われており、北関東の観光地からは悲鳴が上がっています。冬の風物詩である美しい氷の景色やウインタースポーツがピンチに直面しており、各地の観光客数は減少傾向にあります。2019年10月に発生した台風19号による甚大な被害から復興を目指す最中でのこの自然の試練に、現地の関係者は一刻も早い寒波の到来を強く待ち望んでいる状況です。
日本三名瀑の一つとして名高い茨城県の袋田の滝では、例年であれば5割から6割ほどが凍り付く美しい「氷瀑」が見られます。しかし2020年01月現在の冬は、全く凍結が見られない異例の事態が続いています。2020年01月20日までの観光客数は約1万7千人にとどまり、前年と比べて5割以上も減少しました。SNS上でも「滝が凍っていないのは寂しい」「冬の風情が物足りない」といった、現地の様子を心配する声が多数投稿されています。
この苦境を乗り越えるため、被災した地域の旅行需要を呼び戻す国や自治体の支援策「ふっこう割」が2019年12月からスタートしました。これは宿泊料金の割引により観光を促進する制度です。大子温泉の宿泊施設では2020年03月まで予約が順調に入っているものの、宿泊客が期待する見事な凍結には、今後よほどの冷え込みが続かないと厳しいのではないかとホテルのフロント担当者も気をもんでいます。
雪不足の深刻さは、各地のスキー場における客足の大きな落ち込みにも直結しています。群馬県みなかみ町の奥利根スノーパークでは、雪が足りずに営業開始が予定より3日遅れ、現在も全9コースのうち3カ所が滑走できない異例の事態です。データによると、2019年12月29日から2020年01月03日の期間における水上地区のスキー場利用客は前年比で23.8%も減少しており、周辺の温泉街にある旅館の宿泊者数も落ち込んでいます。
さらに、栃木県の日光市で有名な「天然氷」の製造にも大きな影響が及んでいます。天然氷とは、人工的な冷凍庫を使わず、冬の自然な寒さだけで池の水をじっくりと凍らせる貴重な氷のことです。通常は氷が15センチメートルほどの厚みになった段階で切り出しますが、寒さが足りないために十分な厚さに達せず、何度も作り直す苦労が続いています。老舗の製造元でも例年なら2回目の作業に入る時期であるにもかかわらず、まだ1回も採取できていません。
一方で、この逆境に負けず知恵を絞る観光地もあります。日本夜景遺産に選出されている湯西川温泉の「かまくら祭」は2020年02月01日の開幕を控えていますが、積雪が足りません。そこで周辺地域だけでなく、さらに奥地の奥鬼怒からわざわざ雪を搬入して、名物のミニかまくらやバーベキュー用のかまくらを制作する必死の準備が進められています。SNSでは「雪を運んでまで開催してくれる熱意に感動した」「ぜひ応援に行きたい」という温かいコメントが相次いでいます。
冬のアクティビティとして人気のワカサギ釣りも、赤城大沼では2020年01月22日にようやく部分解禁を迎え、2020年01月24日になってようやく全面解禁へと漕ぎ着けました。例年より10日ほど遅れたものの、湖畔の旅館は週末の賑わいに強い期待を寄せています。今回の暖冬は地球温暖化の深刻さを身近に感じさせる出来事ですが、現地の観光業者の方々が懸命にもてなそうとする姿勢には胸が熱くなります。私たち旅行者が現地を訪れ、応援の消費をすることが今まさに求められているのではないでしょうか。
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