2020年1月29日現在、ビール好きの皆様にとって見逃せない大きな変化が迫っています。それが、2026年10月まで3段階にわたって実施される「酒税改正」です。この税制変更は、ビール、発泡酒、そして第三のビールという、私たちが普段親しんでいるお酒の価格体系を根底から揺るがすものとなっています。
現在、350ミリリットル缶あたりの税額は、ビールが77円、発泡酒が約47円、第三のビールが28円と大きく異なります。しかし、2026年10月には、これらが約54円で一本化されるのです。今秋から始まる第1段階では、ビールが7円減税され、第三のビールは約10円増税されます。つまり、これまでのお手頃価格という第三のビールの最大の魅力が薄れ、市場の勢力図が大きく塗り替えられようとしています。
業界最大手アサヒビールの「価値」への転換
この激流に対し、最大手のアサヒビールはどのような道を選ぶのでしょうか。同社は、看板商品「スーパードライ」に経営資源を集中する戦略を貫きます。ビール系飲料の中で利益率が最も高いビール市場において、アサヒは約5割弱のシェアを誇ります。この強固な地盤をさらに固めるべく、税制改正による価格差縮小を追い風に、さらなる収益拡大を目指す構えです。
しかし、市場全体の縮小という現実は無視できません。2019年の販売実績は前年比で3.5%減の1億4196万ケースと厳しい状況でした。そこでアサヒは、これまで追求してきた「販売量」という指標を捨て、2020年からは「販売金額」を経営目標に据える方針を打ち出しました。
塩沢賢一社長が掲げる「ボリュームからバリューへ」という言葉は、非常に印象的です。単に安売りをして販売量を稼ぐ消耗戦から脱却し、商品の「価値」そのものを消費者に届けようとする姿勢は、今の成熟した市場において非常に理にかなっているのではないでしょうか。
「ビール離れ」を乗り越える新たなアプローチ
SNSなどの意見を見ていると、「増税で第三のビールが値上がりするのは痛い」「結局、何を選べばお得なの?」といった戸惑いの声が多く上がっています。こうした消費者の価格への敏感さは当然でしょう。今回の改正により、節約志向の消費者が、酒税が据え置かれる缶チューハイなどのRTD(Ready To Drink:開けてすぐ飲める低アルコール飲料)市場へ流れる可能性も高まっています。
アサヒビールはこの課題に対しても、単なる商品の売り込みではないアプローチを模索しています。「ビールは苦労を乗り越えた達成感や絆を感じるための特別な飲み物」と位置づけ、消費者が飲む瞬間にどのような価値を感じられるかを重視する戦略です。
正直なところ、縮小する市場で販売を維持し続けるのは容易なことではありません。しかし、価格競争に頼るのではなく、真に「うまい」と感じる体験を提供しようとする姿勢は、応援したくなります。この夏に控える東京五輪などの好機を捉え、どれだけ消費者の心に深く刺さる提案ができるか、アサヒビールの手腕が問われることになるでしょう。
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