人手不足倒産に負けない!静岡の外食企業「なすび」に学ぶ、従業員が主役の自走式組織と働き方改革の最適解

日本国内で「人手不足倒産」の危機がかつてないほどに深刻化しています。帝国データバンクの発表によると、2019年1月から2019年12月までの1年間における人手不足を理由とした倒産件数は、前年比で20.9%も増加し、185件に達しました。これは4年連続で過去最多を更新する異常事態といえます。国は生産年齢人口、つまり15歳以上65歳未満の働く中心となる世代の減少を見据え、2019年4月1日より働き方改革関連法案を順次施行しました。しかし、多くの企業が法への対応に追われる中で、経営への打撃はすでに無視できないレベルに達しているのが現状です。

このような厳しい時代にあっても、独自の取り組みで労働環境を劇的に改善し、優秀な人材を惹きつけ続けている企業が存在します。静岡市を中心に外食産業を展開する「なすび」は、その筆頭と言えるでしょう。SNS上でも「飲食業界なのに有給消化率100%は凄すぎる」「従業員を大切にする姿勢が見事に結果に結びついている」と、驚きと称賛の声が多数寄せられています。同社は業務の効率化やデジタル化を進める一方で、人と人との繋がりやネットワークこそが最大の財産であると考え、企業の判断基準となる「フィロソフィー(企業哲学)」を構築しました。

この哲学を社内で徹底的に共有し、教育を重ねたことが同社の強みです。具体的な施策として、忙しい時期に店舗間でスタッフを助け合う独自の仕組み「enjoin」を導入し、一体感を醸成しています。さらに「NASUBIアカデミー」という独自の研修機関を立ち上げ、調理や接客のプロフェッショナルを自社で育成する体制を整えました。経営状況をオープンにする「ガラス張りの経営」を実践し、幹部からアルバイトに至るまで、一人ひとりが自分で考えて動く「自律的行動」を促した結果、驚くべき成果が生まれています。

同社の2018年度の実績を見ると、離職率は約14%と業界平均より低く、有給休暇取得率はなんと100%を達成しています。さらに、1日あたりの平均労働時間も9.2時間にとどめました。こうした魅力的な職場環境が評判を呼び、今期は予定通りの社員数がしっかりと入社しており、人手不足とは無縁の店舗運営を実現させています。SNSでは「こんなホワイトな飲食店なら働いてみたい」という求職者の声も溢れており、企業の姿勢がそのままブランディングにつながっている好例と言えるでしょう。

さらに面白いのは、アルバイトスタッフへの向き合い方です。同社では、退職するアルバイトのための「卒業式」を開催したり、現役のアルバイトが新たな仲間を勧誘する「アルバイトによるアルバイト採用」を実施したりしています。この結果、採用コストを前年同月比の約3割にまで圧縮することに成功しました。働く人々が心地よく過ごし、やる気や技術を高められる環境を整えることで、結果的に人材確保と事業拡大を同時に成し遂げています。形だけの制度に頼らず、企業のあり方そのものを見直したことが成功の鍵です。

世間では、法律を守るための管理ツールや表面的な施策を導入したものの、「働き方改革がうまくいかない」「生産性が向上しない」と悩む企業が後を絶ちません。私は、システムやツールの導入はあくまで手段であり、最終目的ではないと考えます。大切なのは、これからの社会における会社の存在意義や、社員と組織の理想的な関係性を改めて定義し直すことです。従業員と企業が手を取り合い、全員が自発的に動く「自走式の仕組み」を作り上げることこそが、真の働き方改革や人材確保をもたらすに違いありません。

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