日本のGDP600兆円目標は幻に?シェアリングエコノミーの台頭と海外リスクがもたらす経済のパラダイムシフト

政府が掲げた「名目国内総生産(GDP)600兆円」という壮大な目標が、まるで逃げ水のように遠のいています。内閣府は実現の時期を「3年後」と繰り返し発表していますが、その見通しは甘いと言わざるを得ません。ネット上でも「生活実感が伴わない目標だ」「もはや現実味がない」といった厳しい声が溢れています。世界経済の不確実性が高まる中、安倍政権が掲げる「経済成長なくして財政再建なし」という看板は、今まさに大きな岐路に立たされているのです。

名目GDPとは、国内で一定期間に生み出されたモノやサービスの付加価値の合計であり、物価変動を生のデータとして反映するため、私たちの生活実感に近い指標です。内閣府は2020年2月17日に、2019年10月から12月期の速報値とともに、2019年1年間のデータを公表する予定となっています。しかし、注目の経済規模は550兆円台にとどまる見込みであり、悲しいことに目標の600兆円には40兆円以上も届かないのが現実でしょう。

2015年9月に安倍晋三首相がこの目標をぶち上げた当初、政府は2021年度にも達成可能と試算していました。さらに2016年末には研究開発費を算入するなどの計算変更によって、GDPの底上げに成功します。これにより、一時は2020年度への前倒し達成すら囁かれました。しかし、蓋を開けてみれば、2018年、2019年、2020年の各1月に公表された試算では、達成時期が21年度、22年度、23年度と、まるで見せかけのように毎年1年ずつ後ろにズレているのです。

目標が遠ざかる最大の要因は、実質2%、名目3%というあまりに現実離れした成長率の前提にあります。経済の潜在的な実力を示す2018年度の潜在成長率はわずか1%にとどまっており、背伸びをした計画は破綻をきたしました。さらに、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱、そして新たに世界を震撼させている新型コロナウイルスの感染拡大など、想定外の海外リスクが次々と直撃しています。企業は投資を控え、景気の減速感が強まるばかりです。

しかし、この停滞の裏には「豊かさの構造変化」という興味深い側面も隠されています。現代はメッセージアプリの無料通話や、モノやサービスを共有する「シェアリングエコノミー(シェア経済)」が急速に普及しています。利便性は劇的に向上したものの、これらは既存の価格という物差しで測りにくいため、デジタル化が進むほどGDPが低く算出されてしまうのです。もはや、昭和の遺物のような指標だけで社会の豊かさを測る時代は終わったのではないでしょうか。

民間からも「社会の変化に応じた新しい経済指標を検討すべきだ」との真っ当な意見が出ています。実は、経済の「規模」そのものを中期目標にする国は、主要国では中国くらいで、国際的には極めて異例な方針なのです。かつては目標を掲げることで市場の期待を煽る「神通力」が期待されましたが、今や市場関係者からも「画餅にすぎない」と見透かされています。数字の帳尻合わせに終始するのではなく、実質的な国民の豊かさに目を向けるべきです。

2019年10月に消費税率が10%へ引き上げられた中、政府は2025年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指しています。しかし、現実的な成長シナリオに基づくと、国の借金にあたる債務残高の対GDP比は2029年度まで約190%という危機的な水準で高止まりする見通しです。「強い経済」と「財政健全化」の美しい両立シナリオはすでに崩壊しており、政府は速やかに現実を直視した経済政策へ舵を切る必要があります。

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