世界中で猛威を振るう新型肺炎の感染拡大は、東南アジアの農業界に暗い影を落としています。中国との行き来が厳しく制限されたことで、大切に育てられた野菜や果物の輸出がピタリと止まってしまいました。行き場を失った作物を国内で消費しようと、農家の人々は必死の舵取りを試みています。しかし、中国向けと比べると国内の取引価格は驚くほど安く、経営の悪化は避けられない状況です。
ミャンマーとの国境沿いにある貿易の要所では、普段の活気が嘘のように消え去りました。買い付けに来る中国人バイヤーの姿は激減し、1日に数百台もあったトラックの往来は10分の1にまで落ち込んでいます。青果取引所が果物の出荷自粛を要請したため、農家の人々は突然の取引停止を言い渡されました。契約先とも連絡が取れず、現地からは悲痛な声が上がっています。
この深刻な事態に、SNS上では「農家の人たちが本当に気の毒すぎる」「他人事とは思えない、何かできることはないか」といった同情の声が溢れています。さらに「私たちにできるのは、東南アジアの美味しい果物をたくさん買って応援することだけ」という、消費者の温かい支援の動きも広がりを見せていました。
あるミャンマーの農場経営者は、2020年2月から出荷先を国内の都市に切り替えましたが、不慣れな国内市場での販売は手探り状態です。大都市の市場でのスイカの「卸値(おろしね)」は、なんと中国向けの半分にまで暴落してしまいました。ここで言う卸値とは、生産者から卸売業者に引き渡される際の、いわば仕入れ価格のことです。これが下がれば、当然ながら農家の利益は消き飛んでしまいます。
こうした苦境はミャンマーだけにとどまりません。タイでは、大人気である高級果物「ドリアン」の収穫期が迫っており、生産量の大幅な増加が見込まれていました。しかし、輸出業者は消費の冷え込みを確信しており、国内での値崩れを非常に警戒しています。業界団体は政府に対して、早急な価格維持の対策を講じるよう強く求めています。
ベトナムでも同様に、中国国境付近で「ドラゴンフルーツ」を積んだ大量のトラックが足止めされる事態が発生しました。生産される9割を中国向けに依存していたため、受けるダメージの大きさは計り知れません。各国政府は国内や新たな輸出先の開拓を呼びかけていますが、世界最大規模の市場を失った穴を埋めるのは至難の業です。
東南アジアの農業が中国市場に過度に依存していたという脆さが、図らずも今回の事態で浮き彫りになりました。国境の封鎖や移動制限は感染拡大を防ぐために不可欠な措置ですが、それによって現場の生産者が経済的に破滅しては元も子もありません。政府による迅速な経済的救済措置はもちろんのこと、私たち消費者が国境を越えて彼らの農産物を積極的に購入する仕組み作りが必要不可欠です。
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