日本の基幹産業を牽引する自動車業界で、これまでの働き方や給与の仕組みがガラリと変わる歴史的な転換期が訪れました。2020年2月12日、乗用車メーカー8社の労働組合が経営側に対して、春季労使交渉、いわゆる「春闘」の要求書を一斉に提出したのです。例年であれば一律の基本給アップを巡る熱い議論が交わされるところですが、今回はこれまでの常識を覆す異例の動きが相次ぎ、業界内外に大きな衝撃を与えています。
なかでも注目を集めているのが、SUBARU(スバル)が選択した新たな戦略です。スバル労組は、基本給を一律で底上げする「ベースアップ(ベア)」の具体的な金額を提示しませんでした。その代わりに、年齢や勤続年数に応じて自動的に給与が上がる定期昇給などを合わせた、「総額」として月額9000円の賃上げを求める形に舵を切ったのです。このドラスティックな方針転換は、伝統的な一律賃上げの時代の終焉を予感させます。
そもそもベースアップとは、社員全体の給与水準を一斉に引き上げる仕組みのことです。会社の業績が良い時には全体の底上げにつながる一方で、一律での支給となるため、個人の頑張りや成果が直接反映されにくいという側面も持ち合わせています。今回の春闘では、スバルのほかにもトヨタ自動車やマツダが前年に引き続き総額での要求を実施しました。さらに日産自動車も賃上げに必要な全体の原資だけを求めており、ベアにこだわらない組合が半数を占める結果となっています。
また、業界の絶対的リーダーであるトヨタ自動車やホンダは、ベアに対して個人の評価をより色濃く反映させる配分方法を提案しています。これは、ただ会社に在籍しているだけで給与が上がる仕組みから、個人の成果や貢献度に応じて報酬を分配する仕組みへのシフトを意味していると言えるでしょう。一律の底上げから「頑張った人が報われる仕組み」への変化は、実力主義への移行を強く印象付けるものです。
このニュースに対し、SNS上では「一律ベアがなくなるのは時代の流れ」「頑張りが評価されるのは嬉しいが、評価基準の透明性がどこまで保たれるか不安」といった、期待と懸念が入り混じった声が多数寄せられています。やはり、横並びの安心感が薄れることへの戸惑いは隠せないようです。しかし、変化の激しい現代ビジネスにおいて、一律の賃上げに頼る構造自体がすでに限界を迎えているのかもしれません。
編集部としては、この一律から個別評価、そして総額重視へのシフトは、日本の労働環境を健全化するための前向きなステップであると考えます。これからの時代は、企業が生き残るためだけでなく、優秀な人材を引き留めるためにも、より明確な成果主義が求められるはずです。各社の経営陣と労働組合がどのような着地点を見出すのか、2020年の春闘がもたらす自動車業界の未来予想図から今後も目が離せません。
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